第115回 看護師国家試験 午後 問82 解説
📝 問題
下肢静脈瘤の危険因子はどれか。2つ選べ。
✅ 正解
3・5
💡 解説
✅ 高齢と妊娠が下肢静脈瘤の危険因子である。
下肢静脈瘤は、皮膚のすぐ下を走る表在静脈(大伏在静脈・小伏在静脈)の逆流防止弁が壊れて血液が逆流し、静脈が拡張・蛇行する疾患である。 危険因子は「静脈弁に負担がかかる条件」と「静脈壁が弱くなる条件」で考える。
加齢は静脈壁の弾力と弁の機能をともに低下させるため、有病率は年齢とともに上昇する。妊娠は、大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫すること、プロゲステロンが静脈平滑筋を弛緩させること、循環血液量が増えることの3つが重なり、しかも妊娠回数が多いほどリスクが高くなる。ほかに、女性であること、長時間の立ち仕事、肥満、家族歴も危険因子である。
一方、外傷・手術・喫煙は下肢静脈瘤ではなく別の血管疾患の危険因子で、外傷と手術は深部静脈血栓症〈DVT〉、喫煙は閉塞性動脈硬化症などの動脈疾患に結びつく。
- 1
外傷不正解
外傷は、血管内皮の損傷と受傷後の安静により深部静脈血栓症〈DVT〉の危険因子となるが、表在静脈の弁不全で生じる下肢静脈瘤の危険因子ではない。
- 2
喫煙不正解
喫煙は血管内皮を障害して動脈硬化を進め、閉塞性動脈硬化症〈ASO〉やバージャー病(閉塞性血栓血管炎)の危険因子となる。静脈弁の機能低下とは直接結びつかない。
- 3
高齢正解
加齢により静脈壁の弾性線維が減って壁がもろくなり、静脈弁の機能も低下するため、下肢静脈瘤の有病率は年齢とともに高くなる。
- 4
手術不正解
手術は、術中・術後の長時間の不動、脱水、組織損傷による凝固能亢進が重なるため深部静脈血栓症の危険因子である。下肢静脈瘤にとってはむしろ治療(ストリッピング術・血管内焼灼術)の側である。
- 5
妊娠正解
妊娠では、増大した子宮による骨盤内静脈の圧迫、プロゲステロンによる静脈平滑筋の弛緩、循環血液量の増加が重なって下肢静脈に負担がかかる。妊娠回数が多いほどリスクは高くなる。
📚 混同しやすいので注意
血栓ができる3条件をVirchow(ウィルヒョウ)の三徴という。血流の停滞・血管内皮の障害・血液凝固能の亢進の3つである。 手術・外傷・長期臥床が深部静脈血栓症の危険因子になるのは、この3つで説明できる。
| 項目 | 下肢静脈瘤 | 深部静脈血栓症〈DVT〉 |
|---|---|---|
| 障害される血管 | 表在静脈(大伏在静脈・小伏在静脈) | 深部静脈(腸骨・大腿・膝窩・下腿の静脈) |
| 主な危険因子 | 加齢、女性、妊娠・出産、長時間の立ち仕事、肥満、家族歴 | 長期臥床、手術、外傷、悪性腫瘍、経口避妊薬、脱水、凝固異常 |
| 症状 | 静脈の怒張・蛇行、下肢のだるさ、こむら返り、浮腫、色素沈着 | 片側性の下肢腫脹・疼痛・熱感・発赤、ホーマンズ徴候 |
| 主な合併症 | うっ滞性皮膚炎、うっ滞性潰瘍、血栓性静脈炎 | 肺血栓塞栓症 |
| 主な治療 | 弾性ストッキング、血管内焼灼術、ストリッピング術、硬化療法 | 抗凝固療法、必要時は下大静脈フィルター |
参考: 日本静脈学会「下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドライン」/日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について