第115回 看護師国家試験 午前 問96 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。 Aさん(56歳、男性、会社員)は胸部食道癌と診断され、開胸開腹下で食道切除再建術を受けることになった。 病状と手術の説明を聞き「酒もほとんど飲まないのに、食道癌になっちゃうんですね」と落ち込んだ様子で「早くよくなりたい。20歳から毎日20本吸っていたタバコも手術が決まってやめました」と話した。 身体所見:身長168cm、体重54kg、BMI19。 血液所見:Hb13.6g/dL、Ht41.4%、血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒、総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、空腹時血糖102mg/dL、HbA1c4.8%。 呼吸機能所見:%VC78%、FEV1% 67%。 Aさんは術後5日に経口摂取が開始となり、流動食、粥食を経て、術後2週には普通食を1日6回に分けて食べるようになった。食事については「すぐおなかがいっぱいになって、入っていかない感じなんだよね。食べ物を少しずつ口に入れる習慣がついたな」と言いながら、各食50〜70%を摂取していた。 Aさんの退院時の食事指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 食道切除・胃管再建後は、よくかんでから飲み込むよう指導する。
胃を細長い管の形にして頸部まで挙上する胃管再建では、ためておく力(貯留能)が大きく落ち、噴門(下部食道括約筋)の逆流防止機能も失われる。Aさんがすぐ満腹になって食べ進められないのは、このためである。
よくかんで食塊を細かくすると、飲み込みやすくなり消化の負担も減る。食物が一気に腸へ流れ込むことで起こるダンピング症候群も防げる。
- 1
「よくかんでから飲み込んでください」正解
正しい。よくかんで食塊を小さくすると飲み込みやすく、狭くなった再建路の通過もよくなる。
- 2
「食後は早く横になって休んでください」不正解
食道切除・胃管再建後は逆流を防ぐしくみが失われている。食後すぐ横になると逆流性食道炎や誤嚥性肺炎を招く。食後30分〜1時間は坐位を保ち、就寝時も上半身を挙げる。
- 3
「退院後は間食をせずに3食の食事量を確保してください」不正解
1回に入る量が少ないため、間食を含めた1日5〜6回の分割食を続ける必要がある。
- 4
「飲み込みにくいときは、お茶や汁物で流し込むといいです」不正解
水分で流し込むと十分にかまないまま通過し、誤嚥やつかえ、急な腸管流入によるダンピング症候群の原因になる。
📚 これとセットで理解しよう
胃のためる力と逆流を防ぐしくみが同時に失われるので、退院後の食事は「一度に入れすぎない」と「逆流させない」の2本立てになる。
- 食後2時間は横にならない。就寝時は上半身を15〜30度挙げる。
- 1回量を少なくし、1日5〜6回の分割食を続ける。
- 胸やけ・つかえ感・夜間の咳や嗄声は逆流のサイン。受診の目安にする。
| 項目 | 早期 | 後期 |
|---|---|---|
| 出現時期 | 食後30分以内 | 食後2〜3時間 |
| 機序 | 高浸透圧の食物が急速に腸へ流入し、循環血漿量が減少・消化管ホルモンが放出される | 急激な高血糖に対しインスリンが過剰に分泌され、反応性低血糖となる |
| 症状 | 動悸・発汗・顔面紅潮・腹痛・下痢・めまい | 冷汗・脱力・手指振戦・空腹感・意識レベル低下 |
| 対応 | 少量ずつゆっくり。高糖質の一気食いを避ける | 糖分(飴・ジュース)を摂取する |
胃切除後は食後の臥床が勧められることがあるが、食道切除・胃管再建後は逆流予防を優先して食後は坐位を保つ。
参考: 食道癌診療ガイドライン(日本食道学会)/胃切除後障害(ダンピング症候群)に対する食事指導
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について