第114回 看護師国家試験 午後 問97 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。 Aさん(57歳、男性)は、芳香族アミンを扱う化学工場に39年勤務している。現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。いきまないと排尿できなくなり、泌尿器科を受診し、採血および尿検査を受けた。既往歴:特記すべき点なし。生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。検査所見:赤血球308万/μL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL、血清総ビリルビン0.2mg/dL、血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉5.4%。 Aさんの尿所見で予測されるのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 膀胱癌を疑う所見であり、肉眼的血尿が予測される。
手がかりは2つある。芳香族アミンを扱う工場に39年勤務していること、そして40本/日を36年続けた喫煙である。この2つは膀胱癌の二大危険因子で、芳香族アミンは代謝された物質が尿に出て膀胱の粘膜を刺激する(職業性膀胱癌)。
この背景をもつ57歳男性が「尿の色が濃くなった」と訴えているのだから、予測されるのは肉眼的血尿である。ヘモグロビン9.9g/dLの貧血も、黒色便や血便がないことから、尿路からの持続的な出血で説明できる。
- 1
蛋白尿不正解
蛋白尿が続けば血清アルブミンが下がって浮腫が現れるが、Aさんはアルブミン4.2g/dLと正常で、顔面・四肢の浮腫もない。腎炎やネフローゼ症候群を疑う所見がない。
- 2
尿糖陽性不正解
尿糖が出るのは血糖がおおむね160〜180mg/dLを超えたときである。血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c 5.4%はいずれも基準内で、糖尿病を疑う根拠がない。
- 3
肉眼的血尿正解
危険因子がそろったうえに、尿の色が濃くなり、いきまないと排尿できない(腫瘍や血の塊で尿の通りが妨げられている)。膀胱癌の典型的な初発症状は痛みを伴わない肉眼的血尿である。
- 4
ビリルビン尿不正解
ビリルビン尿は、閉塞性黄疸や肝細胞障害で直接ビリルビンが上昇したときに生じる。総ビリルビン0.2mg/dLは基準内で、黄疸を示す所見もない。
📚 一緒に確認しよう
尿の色の変化は、一緒にみられる所見と組み合わせて原因を絞り込む。
- 膀胱癌の二大危険因子は喫煙と芳香族アミンへの曝露。染料・ゴム・皮革・印刷業などで問題になった
- 職業がんは労働安全衛生法に基づく特殊健康診断の対象で、尿細胞診による早期発見が図られる
- 膀胱癌の診断は尿細胞診・膀胱鏡・画像検査で進め、治療はまず内視鏡で腫瘍を削り取る経尿道的膀胱腫瘍切除術から始まる
| 尿の色 | 考えられる原因 | 併せてみる所見 |
|---|---|---|
| 赤〜赤褐色(血尿) | 尿路上皮癌、結石、糸球体腎炎、尿路感染 | 凝血塊、排尿時痛、ヘモグロビン低下 |
| 褐色〜濃黄褐色(ビリルビン尿) | 閉塞性黄疸、肝細胞障害 | 皮膚・眼球の黄染、灰白色便、直接ビリルビン上昇 |
| 赤褐色(ミオグロビン尿) | 横紋筋融解症 | CK著増、筋痛、潜血反応陽性だが赤血球はみられない |
| 混濁・白色 | 膿尿、乳び尿 | 白血球・細菌、発熱 |
参考: 膀胱癌診療ガイドライン(日本泌尿器科学会)/労働安全衛生法(特殊健康診断)
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について