第110回 看護師国家試験 午後 問46 解説
📝 問題
成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 甲状腺全摘後の低カルシウム血症でテタニーが起こる。
甲状腺全摘出術では、背側にある副甲状腺が同時に摘出・損傷されたり血流障害を受けたりすることがあり、副甲状腺ホルモン(PTH)分泌低下から低カルシウム血症を生じる。低カルシウム血症では神経筋の興奮性が高まり、口唇や四肢のしびれ、手指の攣縮(テタニー、助産師手位)、トルソー徴候・クボステック徴候がみられる。 「低カルシウム血症 ── テタニー」が正しい。
乳び漏はリンパ液漏出で嘔気とは結びつかず、術後出血ではドレーン排液は血性で白濁ではない。反回神経麻痺では嗄声・誤嚥が生じ、口唇のしびれ(これは低カルシウム血症の症状)とは組合せが誤りである。
テタニーとは
血液中のカルシウムが減って、手足の筋肉が自分の意思と関係なくつっぱること。手指が助産師手位という独特の形になる。
乳び漏とは
リンパ液を運ぶ胸管が傷つき、リンパ液がもれ出ること。ドレーンの排液が乳白色ににごる。
- 1
乳び漏 ── 嘔気不正解
乳び漏はリンパ液の漏出で、嘔気とは結びつかない。
- 2
術後出血 ── ドレーン排液の白濁不正解
術後出血ではドレーン排液は血性で、白濁は乳び漏の所見。
- 3
反回神経麻痺 ── 口唇のしびれ不正解
反回神経麻痺は嗄声・誤嚥が症状で、口唇のしびれは低Ca血症の症状。
- 4
低カルシウム血症 ── テタニー正解
副甲状腺障害による低カルシウム血症でテタニーが生じる。
📚 ここも一緒におさえておこう
甲状腺全摘出術後の合併症は、「どこが傷つくと何が起こるか」で整理すると症状と結びつく。下の表には起こる時期も並べてあるので、術後の観察の順番として読んでおきたい。 甲状腺全摘後は生涯にわたり甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)の内服が必要で、自己判断で中断しないよう指導する。
- 低カルシウム血症の徴候=Trousseau(トルソー)徴候(マンシェットで上腕を加圧すると助産師手位)、Chvostek(クボステック)徴候(耳前部を叩くと顔面筋が収縮)。
- 術後は頸部の安静を保ち、ベッドは軽度頭部挙上(セミファウラー位)として創部の緊張と出血を防ぐ。
| 合併症 | 原因 | 症状・観察点 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 術後出血・血腫 | 止血が不十分 | 頸部の腫脹、ドレーンからの血性排液の増加、呼吸困難(気道圧迫) | 術直後〜24時間 |
| 反回神経麻痺 | 反回神経の損傷・浮腫 | 嗄声、誤嚥。両側では呼吸困難・窒息 | 術直後 |
| テタニー(低カルシウム血症) | 副甲状腺の摘出・血流障害 | 口唇や指先のしびれ、手指の攣縮、Trousseau(トルソー)徴候・Chvostek(クボステック)徴候 | 術後1〜3日ごろ |
| 甲状腺クリーゼ | 術前のコントロール不良 | 高熱、頻脈、不穏、意識障害 | 術直後 |
| 乳び漏 | 胸管の損傷(主に左頸部) | ドレーン排液の白濁(乳白色) | 経口摂取の開始後 |
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について