第109回 看護師国家試験 午前 問95 解説
📝 問題
2型糖尿病で通院していた A さん(56歳、男性)は、3か月前に末期腎不全の状態で腎代替療法(血液透析)が必要であると腎臓内科の医師から説明された。シャント造設のための入院を予定していたが、仕事が忙しく延期となっていた。1週前から感冒症状があり、体重増加、全身浮腫、全身倦怠感、呼吸苦が出現したため、緊急入院となった。透析用のカテーテルを挿入し、緊急血液透析を行った。入院時の身体所見:体重73 kg(1週間で4kg増加)、血圧178/105 mmHg。入院時の検査所見:Hb 9.5 g/dL、血清尿素窒素72 mg/dL、血清クレアチニン9.0 mg/dL、血清カリウム6.8 mEq/L、血清ナトリウム138.5 mEq/L。緊急入院時の A さんの胸部エックス線写真(別冊No.5)を別に示す。 A さんが緊急血液透析となった病態で正しいのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ 緊急血液透析となった病態は溢水による心不全(肺うっ血)である。
末期腎不全では尿量が減って体内に水分がたまり(溢水)、循環血液量が増えて心臓に負担がかかる。 Aさんは1週間で体重が4 kg増加し、全身浮腫・呼吸苦・高血圧(178/105 mmHg)を呈しており、体液が過剰になって心不全・肺うっ血をきたした状態である。 除水を目的に緊急血液透析が行われた。
ほかの3つは、緊急透析に踏み切った病態としては当たらない。 貧血(Hb 9.5 g/dL)は腎不全に伴って慢性に進むものである。 カリウムは6.8 mEq/L、ナトリウムは138.5 mEq/Lで、どちらも低下していない。 高カリウム血症も透析の適応になりうるが、この場面で緊急透析を要した病態として最も適切なのは体液過剰による心不全である。
溢水とは
腎臓から出せない水分が体にたまり、血液の量が増えすぎた状態。むくみや息苦しさとして現れ、透析で水分を抜く(除水)。
- 1
貧血不正解
Hb 9.5 g/dLの腎性貧血はあるが、緊急透析を要する直接の病態ではない。
- 2
心不全正解
1週で4kg増加、全身浮腫、呼吸苦、高血圧は溢水による心不全・肺うっ血を示す。
- 3
低カリウム血症不正解
血清カリウムは6.8 mEq/Lと高値であり、低カリウム血症ではなく高カリウム血症である。
- 4
低ナトリウム血症不正解
血清ナトリウムは138.5 mEq/Lと正常範囲で、低ナトリウム血症ではない。
📚 これとセットで理解しよう
緊急透析の適応は、頭文字をつないだAIUEOで覚える。 ・A=Acidosis(代謝性アシドーシス) ・I=Intoxication(薬物中毒) ・U=Uremia(尿毒症症状) ・E=Electrolyte(高カリウム血症) ・O=Overload(溢水・肺水腫) AさんはこのうちOverload(溢水)にあたる。
- 高カリウム血症は心電図でテント状T波→P波の平坦化・QRS幅の増大→心室細動へと進み、心停止の危険がある。
- 高カリウム血症の緊急処置はグルコース・インスリン療法(GI療法)、カルシウム製剤(心筋の保護)、陽イオン交換樹脂、そして透析。
- 内シャントは造設後2〜4週間程度で穿刺可能になるため、それまでの緊急透析には透析用カテーテルを用いる。
- 尿毒症症状には悪心・嘔吐などの消化器症状、意識障害、心膜炎、出血傾向、掻痒感などがある。
| 項目 | 目安・注意 |
|---|---|
| 体重管理 | 透析間の増加は中1日で約3%、中2日で約5〜6%以内が目安 |
| シャント側の腕 | 血圧測定・採血・点滴・重い荷物・腕枕を避ける |
| シャントの観察 | スリル(振戦)と血管雑音を毎日確認。触れなければ閉塞を疑い連絡 |
| 食事 | 水分・塩分・カリウム・リンを制限し、エネルギーと蛋白質は十分にとる |
| 受診が必要なとき | 息苦しさ、急な体重増加、シャント音の消失、発熱 |
出典:「第109回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について