第108回 看護師国家試験 午後 問113 解説
📝 問題
Aさん(40歳、男性、会社員)は、うつ病と診断されていた。過量服薬により救急搬送後、精神科病院に入院となった。 入院後1か月、Aさんのうつ症状は改善を認めたが、同室患者とトラブルが続き、不眠や多弁傾向となった。また焦燥感が強く落ち着いて食事ができなくなった。そのため双極性障害と診断され、主治医から炭酸リチウムの内服の指示が出た。Aさんは炭酸リチウムを服用して1週後、手の震え、嘔気が出現した。 Aさんの手の震え、嘔気の原因を判断するための検査で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 炭酸リチウム服用中の手の震え・嘔気はリチウム中毒が疑われるため、薬物血中濃度検査が最も適切である。
炭酸リチウムは有効血中濃度と中毒域が近い(治療域が狭い)薬剤で、過量になるとリチウム中毒を起こす。 初期症状として手指振戦と、嘔気・嘔吐・下痢などの消化器症状が現れる。 Aさんは服用1週後にこれらの症状が出現しており、リチウム中毒を疑って血中リチウム濃度を測定すること(薬物血中濃度検査)が原因判断のために最も適切である。 血中濃度を確認すれば中毒か否かを客観的に評価でき、投与量の調整につながる。
炭酸リチウムは血中濃度モニタリングが必須の代表薬として国試頻出で、「振戦・嘔気・下痢=リチウム中毒を疑い血中濃度測定」を確実に押さえる。
他の選択肢は、リチウム中毒を直接確かめる検査ではない。 尿検査と髄液検査では血液中のリチウム量は分からず、頭部MRIは脳の形の異常をみる検査である。
- 1
尿検査不正解
尿検査ではリチウムの血中濃度を評価できず、中毒の有無を直接判断する手段にはならない。
- 2
髄液検査不正解
髄液検査は中枢神経感染や出血の評価に用いるもので、リチウム中毒の判断には適さない。
- 3
頭部MRI検査不正解
頭部MRIは器質的病変の評価には有用だが、リチウム中毒の原因判断には直結しない。
- 4
薬物血中濃度検査正解
治療域の狭い炭酸リチウムでは血中濃度測定により中毒の有無を客観的に評価でき、最も適切である。
📚 ここも一緒におさえておこう
炭酸リチウムは治療薬物モニタリング〈TDM〉が必須の代表薬。 中毒を誘発する状況もあわせて覚える。
- 中毒の初期症状=手指振戦・嘔気・嘔吐・下痢
- 進行すると意識障害・けいれんがみられる
- 血中濃度を上げる要因=脱水・発熱・食塩制限のほか、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・利尿薬・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の併用
- 服用中は定期的な血中濃度測定に加え、腎機能・甲状腺機能を確認する
- 患者・家族には嘔吐や下痢で脱水になったら受診するよう指導する
- TDMが必要な薬には他にジゴキシン・テオフィリン・バンコマイシン・抗てんかん薬がある
参考: 日本うつ病学会「双極性障害の治療ガイドライン」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について