第108回 看護師国家試験 午後 問112 解説
📝 問題
Aさん(40歳、男性、会社員)は、うつ病と診断されていた。最近、仕事がうまくいかず、大きなミスを起こし、会社に損失を与えたことから自分を責め不眠となり、体重が減少した。ある朝、リビングの床で寝ているAさんを妻が発見し、大きな声で呼びかけたところ、Aさんは1度目を開けたが、すぐ目を閉じてしまった。ごみ箱に、からになった薬の袋が大量に捨ててあり、机には遺書があった。救急搬送後、意識が清明となり、身体的問題がないため精神科病院に入院となった。 入院時の看護師のAさんに対する関わりで適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 過量服薬による自殺企図後の患者には、まず今の希死念慮の有無を率直に尋ねることが適切である。
遺書を残しての過量服薬という重篤な自殺企図の後で入院したAさんに対し、入院時にまず必要なのは、現在の希死念慮(いま死にたい気持ちがあるか)を率直に確認することである。 希死念慮を直接尋ねることは自殺を助長せず、むしろ患者が気持ちを表出でき、リスク評価と安全確保の第一歩となる。 これが危機介入・自殺予防の基本原則にかなう対応である。
自殺予防では「TALKの原則」が国試頻出で、希死念慮を尋ねることの重要性が問われる。
他の選択肢は、看護師の側の価値観を押しつける言葉である。 命を大切にという説得も、家族が悲しむからという言い方も、追い詰められた気持ちをさらに責めることになる。 「死ぬ気があれば何でもできる」は患者を突き放す発言で、最も避けたい。 まず気持ちを尋ね、受け止める姿勢を選ぶ。
- 1
いま死にたい気持ちがあるか尋ねる。正解
現在の希死念慮を率直に尋ねることは自殺を助長せず、感情表出とリスク評価・安全確保につながる適切な対応である。
- 2
命を大切にしたほうがよいと伝える。不正解
命を大切にすべきという説得は価値観の押し付けとなり、追い詰められた患者の気持ちに寄り添えない。
- 3
死ぬ気があれば何でもできると話をする。不正解
「死ぬ気があれば何でもできる」は挑発的で患者を突き放す発言であり、極めて不適切である。
- 4
家族が悲しむから死んではいけないと伝える。不正解
家族が悲しむからという説得は罪悪感を強め、かえって患者を追い詰めるため不適切である。
📚 国試でよく狙われるところ
自殺予防では、尋ねること自体が予防になるという原則を押さえる。
- 自殺のリスク因子=自殺企図の既往・うつ病などの精神疾患・喪失体験・社会的孤立・アルコール問題
- 自殺企図の既往は最も強い危険因子であり、企図直後の入院時は特に注意が必要
- 説得・叱責・安易な励ましはかえって患者を追い詰める
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Tell | 心配していることを言葉で誠実に伝える |
| Ask | 死にたい気持ちについて率直に尋ねる |
| Listen | 評価や説得をせず、絶望的な気持ちを傾聴する |
| Keep safe | 安全を確保し、一人にしない・危険物を管理する |
参考: 日本精神科看護協会「自殺予防と危機介入の看護」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について