第107回 看護師国家試験 午後 問98 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。 A さん(87歳、男性)。アルツハイマー型認知症。 その後、A さんは、コンロの火を消し忘れることや、買い物に行って自宅に戻れないことが何度もあり、在宅での生活が困難になったため、介護老人福祉施設に入所した。A さんは自分の思い通りにならないときに、大声を出して暴れることがあった。時折落ち着かない様子で施設内を徘徊することがあったが、看護師が話しかけると、立ち止まり「散歩しています」と笑顔で話していた。ある日、A さんがエレベーター前に1人で立っていたため、看護師がどこへ行くのか尋ねると、A さんは「家に帰ります」と言った。 このときの看護師の対応として最も適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 「家に帰る」という帰宅願望に対しては、否定せず気持ちを受け止めて一緒に歩くなど付き添う対応が最も適切である。
認知症高齢者の帰宅願望や徘徊は、本人にとって意味のある行動や、不安・混乱の表れであることが多い。 これを頭ごなしに否定・説得すると、かえって混乱や興奮を強めてしまう。 「一緒に出かけましょう」としばらく周囲を歩く対応は、本人の思いを受け止めながら安全に見守り、気分の転換を図る受容的な関わりであり、最も適切である。 Aさんは看護師に話しかけられると立ち止まり笑顔で応じており、寄り添う対応が有効と考えられる。
「入所中なので帰れません」と現実を突きつける説明は本人を否定して混乱を強め、トイレや車椅子への誘導は本人の意図と無関係で行動の意味を無視している。 認知症ケアでは「否定しない・不安を受け止める・安全を確保しながら付き添う」が原則で、パーソン・センタード・ケアの考え方として頻出である。
- 1
「一緒に出かけましょう」としばらく周囲を歩く。正解
帰宅願望を否定せず気持ちを受け止めて一緒に歩く対応は、混乱を避け安全に見守る受容的な関わりで最も適切。
- 2
「トイレに行きましょう」とトイレに誘導する。不正解
トイレ誘導は本人の帰りたい思いと無関係で、行動の意味を無視した対応になる。
- 3
「転んだら危ないですよ」と車椅子に誘導する。不正解
車椅子への誘導は本人の意図に反し行動を制限するもので、興奮を招くおそれがある。
- 4
「入所中なので家には帰れません」と説明する。不正解
「家には帰れません」と現実を突きつける説明は本人を否定し、混乱や興奮を強める。
📚 混同しやすいので注意
認知症の症状は、脳の障害そのものによる中核症状と、環境・心理要因が加わって現れる行動・心理症状〈BPSD〉に分けられ、どちらに入るかを入れ替えて問われる。 中核症状は必ず現れ、BPSDは関わり方や環境しだいで軽くできる、と対にして覚えよう。
- パーソン・センタード・ケア=その人らしさを中心に、本人の視点で理解しケアを組み立てる考え方
- 帰宅願望や徘徊は否定も説得もせず、行動の意味を探って安全を確保しながら付き添う
- 入院・入所などの環境の変化はBPSDの誘因になりやすい。なじみの物やなじみの人との関係を活かす
| 区分 | 症状の例 |
|---|---|
| 中核症状 | 記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失語・失行・失認、判断力低下 |
| BPSD(行動症状) | 徘徊、暴力・暴言、不穏、介護への抵抗、収集癖 |
| BPSD(心理症状) | 不安、抑うつ、幻覚、妄想(物盗られ妄想)、睡眠障害 |
BPSDは環境調整や関わり方で軽減しうるため、非薬物的ケアが第一選択となる。
参考: 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン」
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について