第107回 看護師国家試験 午後 問120 解説
📝 問題
次の文を読み120の問いに答えよ。 A さん(82歳、男性)。長男夫婦との3人暮らし。5年前に認知症と診断された。Barthel〈バーセル〉インデックスは100点、Mini Mental State Examination〈MMSE〉は18点。環境の変化で落ち着きがなくなることがある。日頃は温泉旅行やカラオケを楽しんでいる。右外果にできた創傷から右下肢の腫脹と疼痛が出現したため病院を受診したところ、蜂窩織炎と診断されて入院した。入院翌日、右下肢の腫脹と疼痛は続いている。担当看護師は、認知症の行動・心理症状〈BPSD〉を最小限にするための看護を計画することとした。 担当看護師が計画する A さんへの看護で適切でないのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 炎症が続いている時期に患部を温める足浴は、蜂窩織炎では行わない。
本問は「適切でないもの」を選ぶ設問である。 蜂窩織炎は皮下組織に起こる急性の細菌感染で、患部に発赤・腫脹・熱感・疼痛が出る。 炎症が続いている時期に温めると血管が広がり、腫脹・疼痛と炎症そのものが強くなる。右下肢の足浴は、この時期には行わない。
残る3つは適切なケアである。下肢を高く保つと腫れが引きやすくなり、温泉旅行の話や好きな歌を歌う機会は、認知症の行動・心理症状〈BPSD〉をやわらげる非薬物的なケアになる。
BPSD〈ビーピーエスディー〉とは
認知症でみられる行動・心理症状。徘徊、興奮、不安、抑うつ、幻覚・妄想などがあり、環境や関わり方で強くも弱くもなる。
- 1
右下肢を足浴する。正解
炎症の急性期に患部を温める足浴は、腫脹・疼痛と炎症を強める。
- 2
右下肢を挙上する。不正解
右下肢の挙上は静脈還流を促して腫脹を和らげる適切なケアである。
- 3
温泉旅行の話をする。不正解
楽しみにしている温泉旅行の話は安心感を与えBPSDを和らげる適切な関わりである。
- 4
A さんが好きな歌を歌う機会をつくる。不正解
好きな歌を歌う機会をつくることは情緒を安定させBPSDを最小化する適切なケアである。
📚 ここも一緒におさえておこう
蜂窩織炎は皮下組織に及ぶ急性の細菌感染症で、起因菌の多くは黄色ブドウ球菌やレンサ球菌である。認知症のある人では、入院そのものが症状を揺らす要因になる。
- 炎症の4徴=発赤・腫脹・熱感・疼痛(+機能障害で5徴)
- 急性期は患肢の安静と挙上・冷罨法・抗菌薬投与が基本。温めると炎症が増悪する
- 小さな創、白癬、浮腫、糖尿病は蜂窩織炎の危険因子であり、足の観察とスキンケアが予防になる
- 入院という環境変化はBPSDの誘因になるため、なじみの話題・好きな音楽など本人の楽しみを取り入れた非薬物的ケアを計画する
- 発熱・疼痛の増強、境界の拡大、水疱形成は重症化(壊死性軟部組織感染)を疑う所見
参考: 日本皮膚科学会「皮膚感染症の診療ガイドライン」
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について