第115回 看護師国家試験 午後 問104 解説
📝 問題
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。 Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒による大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。 Aさんはほとんど食事がとれなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きも減少し、傾眠状態となった。家族はAさんの状態の変化に驚き「本人は苦しいのでしょうか。そばにいても良いのかどうかが分かりません」と看護師に話した。 Aさんの家族への看護師の説明で適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ これから起こる経過をあらかじめ説明することが、家族の不安をやわらげる。
食事がとれない、尿量が減る、傾眠になる——これらは老衰の自然な経過で、Aさんの体が終末期に入ったことを示している。 家族は何が起きているか分からないために不安になっている。 ここで有効なのは、これから起こる変化をあらかじめ説明することである。 先に知っておけば、家族は変化に驚かずに心の準備ができ、残された時間を大切に過ごせる。
説明では、無理に食べさせるとかえって苦痛や誤嚥につながること、聴覚は最期まで保たれるとされるので声をかけてよいことを、家族に伝わる言葉で話す。
- 1
「もう何も感じませんよ」不正解
「もう何も感じない」と断定する根拠はない。家族の関わりを断ってしまう説明であり、そばにいる意味を否定することになる。
- 2
「これからの経過についてお話しします」正解
これから起こる経過を先に伝えることで、家族は変化を「異常」ではなく自然な過程として受け止められる。そばにいてよいこと、してあげられることも同時に伝えられる。
- 3
「状態が不安定なのでケアは職員で行います」不正解
看取りの時期こそ、家族が口腔ケアや手足をさする、清拭を手伝うといったケアに参加することが、悲嘆の過程(グリーフ)を支える。職員だけで行うのは家族の関わりを奪ってしまう。
- 4
「これからはご家族が目を離さないでください」不正解
「目を離さないでください」は家族に過大な責任と緊張を課す。休息や食事をとってよいこと、変化があれば職員が連絡することを伝え、家族が消耗しないよう配慮する。
📚 ここも一緒におさえておこう
看取りの時期は、体に現れる徴候と、何をして何をしないかがセットで問われる。
- 終末期の輸液は増やしても予後を延ばさず、浮腫・胸腹水・気道分泌の増加でかえって苦痛を強めることがある
- 口渇には輸液よりも口腔の保湿・氷片・口腔ケアが有効である
- 家族へのグリーフケアは死亡後だけでなく、看取りの過程からすでに始まっている
| 時期 | 主な徴候 |
|---|---|
| 数週間前 | 食事・水分摂取量の減少、傾眠、活動性の低下、体重減少 |
| 数日前 | 尿量減少、末梢の冷感・チアノーゼ、意識レベルの低下、せん妄 |
| 数時間〜前日 | 下顎呼吸、Cheyne-Stokes〈チェーンストークス〉呼吸、死前喘鳴、橈骨動脈が触れにくくなる、網状皮斑 |
参考: 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)/終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(日本緩和医療学会)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について