第115回 看護師国家試験 午後 問103 解説
📝 問題
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。 Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒による大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。 Aさんは「私らしく死にたいの」と何度も看護師に話すようになった。 看護師の声かけで最も適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 「私らしさ」が何を指すのかを本人に尋ねる声かけが最も適切である。
Aさんは施設での看取りに合意したうえで「私らしく死にたいの」と何度も語っている。 繰り返し語るのは、まだ伝えきれていない具体的な希望があるからである。 その「私らしさ」が何を指すのか——誰にそばにいてほしいか、何を口にしたいか、何をされたくないか——を本人の言葉で聞き取るのが看護師の役割である。
これはアドバンス・ケア・プランニング〈ACP〉の実践そのものである。 ACPは書類に署名させることではなく、本人が大切にしていることを繰り返しの対話で確認し、ケアに反映していく過程を指す。
- 1
「Aさんはまだまだ頑張れますよ」不正解
「まだまだ頑張れますよ」は、死を意識しているAさんの現実認識を否定する励ましである。聞いてもらえないと感じ、以後この話題を語らなくなってしまう。
- 2
「できるだけAさんのそばにいます」不正解
そばにいる姿勢を示すこと自体は大切だが、Aさんが伝えようとしている「私らしさ」の中身には触れられていない。看護師の関わり方の表明にとどまり、本人の希望を引き出せない。
- 3
「Aさんがどうしたいか教えてください」正解
「どうしたいか」を本人に尋ねることで、価値観・希望・してほしくないことが具体的に語られる。本人の意思の確認がACPの中心であり、聞き取った内容を家族・多職種と共有してケア計画に反映できる。
- 4
「そんなことを言うとご家族が悲しみますよ」不正解
家族を引き合いに出して発言を封じており、Aさんの意思表明を否定している。本人の思いを聞かないまま家族の感情を優先することは、本人中心のケアに反する。
📚 ここも一緒におさえておこう
人生の最終段階の意思決定は、本人の意思を確認できるかどうかで手順が変わる点が問われる。看取りの場となる介護老人福祉施設の役割も一緒におさえよう。
- 本人の意思が確認できる場合=本人と医療・ケアチームの話し合いに基づく本人による意思決定を基本とする
- 本人の意思が確認できない場合=家族等が本人の意思を推定し、推定できないときは本人にとって最善の方針を家族等と話し合って決める
- 家族等がいない場合や方針が決まらない場合=複数の専門職からなる話し合いの場を設けて助言を得る
- 本人の意思は変化しうるため話し合いは繰り返し行い、そのつど内容を記録して共有する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 老人福祉法(特別養護老人ホーム)/介護保険法(介護老人福祉施設) |
| 入所要件 | 原則として要介護3以上(特例入所の仕組みあり) |
| 主な役割 | 生活の場としての介護。看取り介護加算により施設での看取りも行われる |
| 医師の配置 | 非常勤でも可(入所者の健康管理と療養上の指導) |
参考: 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)/「人生会議」普及・啓発事業(厚生労働省)
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について