第115回 看護師国家試験 午前 問98 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。 Aさん(60歳、女性、会社員)は15年前に糖尿病と診断され血糖降下薬を服用していた。その後、微量のアルブミン尿が出現し、腎機能は徐々に悪化したため、10年前からインスリン療法が開始された。Aさんは外来受診時に労作時の息切れを訴えており、肺野の水泡音と下肢の浮腫が認められ、精査加療目的で入院した。入院時は、身長155cm、体重65kgで1か月前から5kg増加している。体温36.3℃、呼吸数28/分、脈拍82/分、血圧160/82mmHgであった。血液検査データは、Hb8.5g/dL、HbA1c8.5%、アルブミン3.1g/dL、クレアチニン3.5mg/dL、K4.0mEq/Lで、推算糸球体濾過量〈eGFR〉は15mL/分/1.73m²であった。 医師はAさんに透析導入の可能性について説明した。Aさんは「週に3回も病院に来るのは無理です。他の患者さんから家でできる腹膜透析もあるって聞いたけど、どういうものかしら」と看護師に尋ねた。 Aさんへの腹膜透析に関する説明内容で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 腹膜透析は腹腔にカテーテルを留置して行う治療である。
腹膜透析は、腹腔内に留置した腹膜透析用カテーテルから透析液を注入し、自分の腹膜を半透膜として老廃物と余分な水分を取り除く治療である。
Aさんは「週に3回も病院に来るのは無理」と話している。PDは通院が月1〜2回ですみ、自宅や職場でバッグ交換ができるため、生活と両立しやすい。
ただし連日、自分で手技を行う必要がある。清潔操作を確実に習得できるか、支援してくれる人がいるかも併せて評価する。説明では利点だけでなく腹膜炎などの注意点も伝え、Aさん自身が治療法を選べるようにすることが大切である。
- 1
入浴はできない。不正解
出口部が治っていれば、専用のパウチやカバーで保護してシャワー浴・入浴ができる。
- 2
腸炎の危険性がある。不正解
最も注意すべき感染は腹膜炎(バッグ交換時の汚染、出口部・トンネル感染)であり、腸炎ではない。
- 3
腹腔にカテーテルを挿入する。正解
正しい。腹腔内にカテーテルを留置し、透析液の注入と排出を繰り返す。自分の腹膜が透析膜のはたらきをする。
- 4
心血管系への負担が血液透析より大きい。不正解
腹膜透析は連日、緩やかに除水するため血圧や循環血液量の変動が小さく、心血管系への負担は血液透析より小さい。残腎機能も保たれやすい。
📚 これとセットで理解しよう
血液透析と腹膜透析は、通う場所・アクセス・体への負担・合併症がすべて対照的。並べて覚えると出題に強い。
- CAPD=連続携行式腹膜透析。1日4回程度、手動でバッグ交換する。
- APD=自動腹膜透析。夜間就寝中に機械(サイクラー)が自動で交換する。
| 項目 | 血液透析〈HD〉 | 腹膜透析〈PD〉 |
|---|---|---|
| 実施場所・頻度 | 通院。週3回・1回4時間程度 | 自宅・職場。連日(通院は月1〜2回) |
| アクセス | 内シャント(前腕) | 腹膜透析カテーテル(腹腔) |
| 除水の仕方 | 間欠的・急速 | 持続的・緩徐 |
| 循環への負担 | 大きい(透析中の血圧低下・不均衡症候群) | 小さい |
| 主な合併症 | シャント閉塞・感染、不均衡症候群 | 腹膜炎、出口部・トンネル感染、被嚢性腹膜硬化症〈EPS〉 |
| 食事制限 | 水分・カリウム制限が厳しい | 水分・カリウムは比較的緩やか。蛋白喪失に注意 |
| 継続可能期間 | 長期継続が可能 | 腹膜の劣化により概ね5〜8年が目安 |
参考: 腹膜透析ガイドライン(日本透析医学会)/慢性腎臓病 患者指導の手引き
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について