第115回 看護師国家試験 午前 問120 解説
📝 問題
次の文を読み118〜120の問いに答えよ。 午前9時、震度6強の大地震が発生した。発災直後、A病院では傷病者への対応として救急病棟に8床確保した。その応援のために各部署から看護師3名、医師2名、臨床工学技士1名、臨床検査技師1名、理学療法士1名が救急病棟に集まった。救急病棟のリーダー看護師は他部署から集まったスタッフとカンファレンスを行った。 発災2時間後、救護所に2名の傷病者が同時に到着した。 B氏(63歳、男性):避難の途中に転倒し、右足首を負傷した。「自力で歩いてきた。痛みは我慢できる程度」と話す。 体温37.2℃、呼吸数12/分、脈拍82/分、血圧140/80mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%。右足首に内出血がある。発汗著明、頭痛はない。 C氏(36歳、男性):避難の途中でつまずき、右側腹部をガードレールにぶつけた。「ここが少し痛むだけ」と右側腹部を押さえている。 体温37.4℃、呼吸数20/分、脈拍84/分、血圧110/74mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%、皮膚冷感なし、右側腹部に軽度の発赤があるが腫脹や外出血はない、腹壁緊張はない。 10分経過後、看護師は2名の観察を行った。 B氏:右足首の内出血と腫脹が軽度増大している。体温37.5℃。他のバイタルサインに変動はない。 C氏:「少しお腹が痛い、吐き気がする」と訴える。体温37.4℃、呼吸数24/分、脈拍98/分、血圧88/48mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉94%。腹壁緊張あり。 このときの看護師の対応で優先されるのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 腹腔内出血によるショックが進んでいるC氏の静脈路確保の準備が最も優先される。
C氏は避難の途中で右側腹部をガードレールに打った鈍的腹部外傷である。到着時は「少し痛むだけ」で腹壁緊張もなかったが、10分後にはこう変化した。 ・血圧 110/74 → 88/48mmHg ・脈拍 84 → 98/分 ・呼吸数 20 → 24/分 ・SpO2 96 → 94% ・腹壁緊張が出現
これは腹腔内出血(肝・腎・脾損傷など)による出血性ショックが進んでいる所見である。ショック指数は98÷88≒1.1で、1,000mL以上の出血が示唆される。ただちに静脈路を確保して輸液を始め、高次医療機関への搬送につなげる準備が最優先になる。
一方のB氏は、足関節の内出血と腫脹がわずかに増え、体温が0.3℃上がっただけ。ほかのバイタルサインに変動はなく緊急度は低い。
この設問は、トリアージは1回で終わらせず繰り返す(二次トリアージ)ことの大切さを示している。
- 1
B氏の水分補給不正解
B氏はバイタルサインが安定しており緊急度は低い。水分補給は必要になりうるが、ショックが進行しているC氏より優先されることはない。
- 2
B氏の頸部の冷却不正解
B氏は発汗著明で体温37.5℃だが、意識は清明でバイタルも安定している。頸部冷却が最優先になる状況ではない。
- 3
C氏の吐物処理の準備不正解
嘔気への対応(体位の工夫、誤嚥予防)は必要だが、吐物処理の準備は循環の維持より優先されない。
- 4
C氏の静脈路確保の準備正解
正しい。血圧低下・頻脈・頻呼吸・SpO2低下・腹壁緊張の出現は腹腔内出血によるショックの進行を示す。静脈路を確保して循環を支え、緊急搬送につなげる。
📚 国試でよく狙われるところ
出血性ショックは、出血量に応じて脈拍・血圧・呼吸数が段階的に変わる。血圧が下がる前の頻脈・脈圧低下を見逃さないこと。
- ショック指数〈SI〉=心拍数 ÷ 収縮期血圧。1で約1,000mL、1.5で約1,500mL、2で約2,000mLの出血が目安。
- ショックの5P=蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全。頭文字が英語のPでそろう。
- 鈍的腹部外傷は受傷直後に所見が乏しくても、時間とともに出血が表に出てくる(遅発性)ことがある。
| クラス | 推定出血量 | 脈拍(/分) | 血圧 | 呼吸数(/分) |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 循環血液量の15%未満(〜約750mL) | 100未満 | 正常 | 14〜20 |
| Ⅱ | 15〜30%(約750〜1,500mL) | 100〜120 | 正常だが脈圧が低下 | 20〜30 |
| Ⅲ | 30〜40%(約1,500〜2,000mL) | 120〜140 | 低下 | 30〜40 |
| Ⅳ | 40%超(約2,000mL超) | 140超 | 著明に低下 | 35超 |
C氏はクラスⅡ〜Ⅲに相当する。
参考: 外傷初期診療ガイドライン〈JATEC〉/病院前外傷教育プログラム〈JPTEC〉/災害医療 トリアージと二次トリアージ
出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について