第114回 看護師国家試験 午前 問70 解説
📝 問題
精神科病院入院患者の身体的拘束中に発生しやすい合併症はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 身体的拘束中に起こりやすいのは、深部静脈血栓症から生じる肺血栓塞栓症である。
身体的拘束で手足や体の動きが制限されると、下肢の静脈に血がとどこおる。
そこへ脱水や薬による鎮静が加わると深部静脈血栓症ができ、体を動かしたときに血栓が肺動脈へ飛んで肺血栓塞栓症を起こす。
突然の呼吸困難・胸痛・頻呼吸・酸素飽和度の低下がみられ、命に関わる。精神科病院での拘束に関連した死亡としてくり返し報告されている、最も重大な合併症である。
拘束による問題はほかにもある。誤嚥や窒息、褥瘡、関節拘縮、筋力の低下、便秘、尿路感染、そして自尊心の低下や医療者への不信。 拘束はほかに方法がないときに限って行い、できるだけ早く解除するのが原則になる。
- 1
糖尿病〈diabetes mellitus〉不正解
糖尿病は代謝の病気で、数日から数週間の拘束によって起こるものではない。
- 2
足白癬〈tinea pedis〉不正解
足白癬は白癬菌による皮膚の感染で、拘束が直接の原因ではない。足を清潔にできない状況で悪化することはある。
- 3
悪性症候群〈malignant syndrome〉不正解
悪性症候群は抗精神病薬の重い副作用(高熱・筋のこわばり・意識障害)で、拘束そのもので起こるものではない。
- 4
肺血栓塞栓症〈pulmonary thromboembolism〉正解
正しい。下肢の血のとどこおりと脱水から血栓ができ、それが肺の動脈をふさぐ。
📚 ここも一緒におさえておこう
身体的拘束は精神保健指定医が必要と認めたときにだけ始められる。診療録には理由と開始・解除の日時を書く。
- 拘束中はこまめに観察し、バイタルサイン・手足の血の巡り・皮膚の状態を確かめる。
- 水分をこまめに補い、弾性ストッキングの着用と下肢を動かすことで血栓を防ぐ。
- 食事・排泄・清潔ケアの時間には、できる範囲で拘束を一時的に解く。
- 拘束の理由と解除の見通しを本人にもくり返し説明し、解除後は本人の体験を聴く。
参考: 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 第36条・第37条/厚生省告示第130号(処遇の基準)
出典:「第114回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について