第112回 看護師国家試験 午後 問62 解説
📝 問題
大規模災害が発生し、被災した住民は自治体が設置した避難所に集まり避難生活を始めた。発災3日、自治体から派遣された看護師は避難所の片隅で涙ぐんでいるAさんへの関わりを始めた。Aさんは「悲しい気持ちが止まりません」と話している。 このときのAさんへの看護師の発言で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 強い悲しみは異常な出来事に対する正常な反応であると保証し、受け止める対応が最も適切である。
災害急性期(発災3日)に強い悲しみが止まらないという反応は、異常な出来事に対する正常な心理反応である。これを「異常なことではない」と保証(正常化)することは、被災者の安心と回復力の維持につながる。 「悲しい気持ちが止まらないのは異常なことではないですよ」という言葉かけは、サイコロジカル・ファーストエイド〈PFA〉の基本姿勢に沿った適切な対応である。
他の選択肢はいずれも被災者の感情を否定・抑圧する不適切な関わりである。他のことを考えさせるのは感情から目をそらさせ、「乗り越えられる」は根拠のない励ましで気持ちを軽視し、「みんなが大変」という言葉は比較によって感情を我慢させる圧力になる。急性期には無理な励ましや説得ではなく、傾聴と安心・安全の確保、感情の受容が優先される。
国試の災害メンタルヘルスでは、被災者の反応を病気として扱わないという考え方が繰り返し問われる。感情を否定・比較・叱咤する選択肢は誤りと判断できる。
サイコロジカル・ファーストエイド〈PFA〉とは
災害や事故の直後に行う、こころの応急手当て。専門的な治療ではなく、安全の確保・傾聴・必要な支援へのつなぎを行う。
- 1
「災害以外のことを何か考えましょう」不正解
他のことを考えさせるのは感情から目をそらさせ、悲嘆の受容を妨げる不適切な対応である。
- 2
「あなたの悲しい気持ちは乗り越えられるものですよ」不正解
「乗り越えられる」という根拠のない励ましは相手の気持ちを軽視することになる。
- 3
「悲しい気持ちが止まらないのは異常なことではないですよ」正解
強い悲しみは異常事態への正常な反応であると正常化(保証)することは、被災者の安心につながる適切な対応である。
- 4
「みんなが大変なのですからAさんも元気を出してください」不正解
他者と比較して元気を出すよう促すのは感情の我慢を強いる不適切な関わりである。
📚 国試でよく狙われるところ
災害時のこころのケアは、時期ごとの反応と、してはいけない関わりをセットで問われる。気をつけるのは「無理に語らせない・励まさない・比べない」の3つ。 急性期に体験を語らせる心理的デブリーフィングは、かえって症状を悪化させうるため推奨されない。話すかどうかは本人のペースに任せる。
- PFAの活動原則は見る・聞く・つなぐ。
- 急性期は無理に体験を語らせない。安全・安心・水分や休息といった基本的ニーズの確保が先。
- 被災地の精神科医療・精神保健活動を担う専門チームはDPAT(災害派遣精神医療チーム)。
| 時期 | 特徴 |
|---|---|
| 茫然自失期(発災直後〜数時間) | 恐怖体験のため無感覚・茫然自失となる |
| ハネムーン期(数日〜数週) | 被災者同士の連帯感や高揚感がみられる |
| 幻滅期(数週〜数か月) | 支援の遅れや格差への失望・怒り・不満が噴出。飲酒問題も増える |
| 再建期(数か月〜) | 生活再建に向けて立ち直りはじめる |
参考: サイコロジカル・ファーストエイド〈PFA〉の基本原則
出典:「第112回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について