第108回 看護師国家試験 午後 問95 解説
📝 問題
Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。右中大脳動脈領域に脳梗塞の所見が認められた。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。 入院から3週が経過し、リハビリテーションによって日常生活動作〈ADL〉は改善しているが、夜間は眠れず、食欲も低下している。Aさんは「なかなか良くならない。何もできなくなってしまった」と話している。 現在のAさんへの声かけで、最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 回復が思うように進まず気持ちが沈むAさんに対し、その思いを受け止め共感的に返す声かけが最も適切である。
脳梗塞後の患者は、日常生活動作〈ADL〉が改善していても、思うように回復しない焦りや喪失感から抑うつ的になりやすい。 Aさんは不眠と食欲低下があり、「何もできなくなってしまった」と自己を否定する言葉を口にしている。 この段階でまず必要なのは、本人の気持ちを言葉にして受け止め、感情表出を促すことである。 「なかなか良くならないと感じているのですね」は、患者の言葉をそのまま返す反復にあたる。
心理的支援の原則は「傾聴・受容・共感」で、患者の否定的な感情を打ち消したり直したりしようとしない。 時間が経てば良くなるという言い方は根拠のない保証になる。 リハビリをがんばりましょうという励ましは、本人がいましている努力を見ていないことになる。 同じ病気の患者を紹介するのは、気持ちが少し落ち着いてからでよい。
- 1
「時間が経てば良くなりますよ」不正解
根拠のない保証は患者の実感と食い違い、かえって不信や失望を招くおそれがある。
- 2
「リハビリをがんばりましょう」不正解
励ましの押し付けは、すでに努力している患者にさらなる負担や自責感を与えかねない。
- 3
「同じ病気の患者さんをご紹介しますね」不正解
同病者の紹介はこの段階では時期尚早で、まず本人の感情を受け止めることが優先される。
- 4
「なかなか良くならないと感じているのですね」正解
患者の否定的感情を映し返す共感的対応で、感情表出を促し信頼関係を築くうえで最も適切である。
📚 国試でよく狙われるところ
国試のコミュニケーション問題では、患者の感情を映し返す選択肢が正解になりやすい。
- 避けたい対応=安易な励まし・根拠のない保証・説得・話題の転換
- 脳卒中後は抑うつを伴いやすく、不眠・食欲低下・自己否定的な発言はその徴候となる
| 技法 | 内容 |
|---|---|
| 開かれた質問 | 自由に答えを引き出す。「どのように感じていますか」 |
| 閉じた質問 | はい・いいえで答えられる。事実確認や理解が難しい患者に有効 |
| 反復(繰り返し) | 患者の言葉をそのまま返し、聴いていることを伝える |
| 明確化 | 曖昧な内容を確かめ、患者の言いたいことを整理する |
| 沈黙 | 答えを急がせず、患者が考えをまとめる時間をつくる |
参考: 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について