第108回 看護師国家試験 午後 問118 解説
📝 問題
Aさん(55歳、男性、自営業)は、父親(78歳)と2人暮らし。Aさんは、2年前から食後に心窩部痛を感じていたが、医療機関を受診していなかった。午後3時、Aさんは胃部不快感を訴えた直後、突然コップ1杯程度の吐血があり倒れた。父親が救急車を呼び、救急病院に搬送された。到着時、意識はジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-3。バイタルサインは、体温36.4 ℃、呼吸数20/分、脈拍124/分、整、血圧86/50 mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %。顔面は蒼白で、皮膚は湿潤している。四肢冷感を認める。眼瞼結膜は軽度貧血様であるが、黄染を認めない。腹部は平坦で腸蠕動音は微弱、心窩部に圧痛を認めるが、筋性防御はない。胃部不快感は受診前よりも改善している。担当した医師に父親が「息子は黒い便が出ると言っていた」と伝えた。 Aさんの状態で考えられるのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 大量吐血・黒色便に加え頻脈・低血圧・冷汗・蒼白を示すことから、出血性ショックが考えられる。
Aさんは2年来の食後心窩部痛(消化性潰瘍を示唆)があり、突然の吐血・黒色便(タール便=上部消化管出血)をきたした。 脈拍124/分の頻脈、血圧86/50 mmHgの低血圧、顔面蒼白・皮膚湿潤・四肢冷感・眼瞼結膜の貧血様所見は、大量の消化管出血による循環血液量減少=出血性ショックの典型的徴候である。 JCS Ⅰ-3の軽度意識障害も循環不全を反映する。 出血源と循環動態の両方から、出血性ショックと判断する。
ショックの分類と徴候は国試頻出で、出血性(循環血液量減少性)ショックでは「頻脈・低血圧・皮膚蒼白湿潤・冷感・尿量減少」が典型である。
他の選択肢は、大量の吐血とショック徴候の両方を説明できない。 イレウスなら腹部膨満と排ガスの停止が前に出るが、Aさんの腹部は平坦である。 低血糖を示す血糖値の記載はなく、脱水だけではこの急激な循環の破綻に至らない。
タール便とは
血液が胃酸で酸化して黒くなり、コールタールのように黒くねばつく便。
- 1
出血性ショック正解
大量吐血・黒色便による循環血液量減少で、頻脈・低血圧・蒼白・冷汗を呈しており出血性ショックが考えられる。
- 2
イレウス不正解
イレウスは腹部膨満・排ガス停止・腸蠕動の異常が主体で、大量吐血やショック徴候を説明できない。
- 3
低血糖不正解
低血糖を示す血糖値の記載はなく、吐血・黒色便やショック徴候とも直接関連しない。
- 4
脱水不正解
脱水のみでは大量吐血と急激なショック徴候を十分に説明できず、出血源の存在を踏まえると出血性ショックが妥当である。
📚 混同しやすいので注意
ショックは原因別に4つに分類する。 徴候は共通でも、原因により対応が異なる。
- ショックの5徴(5P)=蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全
- 血液分布異常性ショックの初期は四肢が温かい(ウォームショック)ことがある
- 上部消化管出血では吐血・タール便、下部では鮮血便がみられる
| 分類 | 原因の例 |
|---|---|
| 循環血液量減少性ショック | 出血、熱傷、重度の脱水 |
| 心原性ショック | 急性心筋梗塞、重症不整脈、心筋症 |
| 心外閉塞・拘束性ショック | 心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症 |
| 血液分布異常性ショック | アナフィラキシー、敗血症、神経原性 |
参考: 日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン」
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について