第108回 看護師国家試験 午前 問97 解説
📝 問題
Aさん(68歳、女性)は、1人暮らし。隣の市に娘がいる。日常生活は自立している。10年前に糖尿病と診断され、血糖降下薬を服用している。最近の血液検査でHbA1cが8.5%のため、インスリンの自己注射を導入するかどうかを検討することになった。医師からAさんには自己注射についてまだ説明されていない。 Aさんに自己注射を導入できるかを判断するための情報で最も重要なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ インスリン自己注射は目盛りや単位を正確に読む必要があるため、細かい文字が読めるかが導入可否の最重要情報である。
インスリンの自己注射は、注入器の単位表示を正確に読み取り、指示された単位をダイヤルに合わせて注射する手技を、患者自身が安全に行えることが前提になる。 そのため導入できるかどうかを見極めるうえで最も重要なのは、単位や目盛りといった細かい文字を読めるかという視力・視認能力である。 誤った単位設定は低血糖や高血糖の重大な事故につながる。
他の3つは、療養全体を支えるうえでは大切な情報だが、手技そのものを安全に行えるかの判断には直接結びつかない。 運動療法の実施状況は血糖の管理、食品交換表は食事の組み立て、近所の支援者の有無は生活の支えに関わる情報である。
食品交換表とは
糖尿病の食事療法で使う表。食品を働きごとのグループに分け、同じグループの中で入れかえられるようにしたもの。
- 1
細かい文字が読める。正解
注入器の単位表示を正確に読み取れることは安全な自己注射の前提であり、導入の可否を判断するうえで最も重要な情報である。
- 2
運動療法を行っている。不正解
運動療法の実施は血糖コントロール全般には関係するが、自己注射手技の遂行可否を直接判断する情報ではない。
- 3
近所に支援をしてくれる人がいる。不正解
近所の支援者の有無は療養支援体制として有用だが、まず本人が手技を行えるかの判断が優先される。
- 4
食品交換表の使い方を理解できている。不正解
食品交換表の理解は食事療法に関わる情報で、自己注射の手技遂行の可否を判断する最重要情報ではない。
📚 ここも一緒におさえておこう
インスリン自己注射の導入では、手技を最後まで安全に行えるか(視力・手指の巧緻性・理解力)をまず評価する。 そのうえで、注射部位と打ち方、製剤の保管、低血糖やシックデイへの対応まで、続けていくための指導がひととおり問われる。
- 注射部位は腹壁(吸収が速く安定)、上腕外側、大腿、殿部。同じ場所に繰り返すと皮下硬結ができて吸収が不安定になるため、2〜3cmずつずらす
- 皮下注射は原則90度(皮下脂肪が薄ければつまみ上げるか45度)で、注入後は5〜10秒待ってから針を抜く
- 未使用のインスリンは冷蔵(凍結させない)、使用中のものは室温で保管し、高温・直射日光を避ける
- 低血糖症状(冷汗、動悸、手指振戦、強い空腹感)が出たらブドウ糖10g(または砂糖20g)を摂取し、改善しなければ再度摂取して受診する
- 発熱や下痢で食事がとれない日(シックデイ)でも、自己判断でインスリンを中止せず、必ず医療者に連絡する
参考: 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド』/医療情報科学研究所編『病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について