第108回 看護師国家試験 午前 問72 解説
📝 問題
Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右膝の痛みにより立位が困難である。端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。 Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 殿部をわずかに持ち上げられるAさんの移乗には、トランスファーボードが適切である。
Aさんは左片麻痺と右膝の痛みで立位が困難だが、端坐位で殿部をわずかに持ち上げられる。 この力を使って、座ったまま横へ滑らせて移せるのがトランスファーボード(移乗用ボード)である。抱え上げずにすむので、小柄な妻の負担が大きく減る。
他の3つは、Aさんの状態に合わない。 歩行器は立って歩ける人が使うもので、立位が困難なAさんの移乗には使えない。 ベッド柵は起き上がりを支えるが、移乗そのものの負担は変わらない。 電動介助リフトは自力ではまったく持ち上げられない人に使うもので、殿部を持ち上げられるAさんには大がかりすぎる。
- 1
歩行器不正解
歩行器は立位・歩行が可能な人向けで、立位困難なAさんの移乗介助には適さない。
- 2
ベッド柵不正解
ベッド柵は起き上がりの支持に役立つが、移乗そのものの介護負担は軽減しない。
- 3
電動介助リフト不正解
電動介助リフトは自力で持ち上げられない全介助の人に使うもので、Aさんには大がかりすぎる。
- 4
トランスファーボード正解
トランスファーボードは、殿部をわずかに持ち上げられる力を活かして、座ったまま滑らせて移乗できる用具である。
📚 ここも一緒におさえておこう
福祉用具は「その人に何がどこまでできるか(残存能力)」に合わせて選ぶ。 能力より大きすぎる用具は自立を奪い、小さすぎる用具は介護者の体を痛める。
- 介護保険の福祉用具は貸与(レンタル)が原則
- 入浴や排泄に使うものなど、再利用になじまないものは特定福祉用具販売の対象
- 移動用リフトのつり具(スリング)は販売、リフト本体は貸与にあたる
| 対象者の状態 | 適する用具 |
|---|---|
| 立位・歩行が可能 | 杖、歩行器、シルバーカー |
| 立ち上がりはできるが不安定 | 手すり、ベッド用グリップ、立ち上がり補助いす |
| 立位は困難だが座位が保て、殿部を少し浮かせられる | トランスファーボード(移乗用ボード)、スライディングシート |
| 自力ではまったく持ち上げられない(全介助) | 床走行式・据置式・レール走行式の移動用リフトとつり具 |
参考: 福祉用具・移乗介助に関する在宅看護学の標準的知見
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について