第108回 看護師国家試験 午前 問120 解説
📝 問題
Aさん(81歳、女性)は、1人暮らし。7年前から糖尿病、高血圧症、便秘症で病院の内科に定期的に通院しており、近所に住む長女が時々様子を見に来ていた。本日、長女がAさん宅を訪ねたところ、Aさんは床に倒れて起き上がれなくなっていた。受診の結果、胸椎と腰椎の圧迫骨折で病院に入院した。入院時、Aさんは病棟看護師に「朝食は食べていません。朝の薬を飲んだと思うが、はっきり覚えてません。家に帰ればわかります」と話した。病棟看護師が体のことで心配なことはあるかを問うと「この半年で体重が2kg減りました。最近は疲れやすく歩くのもゆっくりで、握力も弱くなり荷物を持つのがつらいです。このまま寝たきりになるのではないかと不安です」と話した。内科のカルテには1か月前の計測で身長150cm、体重41kgと記載されていた。入院時のバイタルサインは、体温36.6℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧144/88mmHg。血糖値114mg/dLで、軽度の皮膚湿潤があった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは29点であった。 Aさんは、入院中に要介護1と認定された。退院後は週2回の家事援助サービスを利用した。退院3か月後、Aさんは長女と病院の整形外科外来を受診した。長女は診察を待つ間、外来看護師に「母は最近、ご飯を食べたのに食べていない、と近所の人に言うので困っている。薬の飲み忘れも目立ってきた。どうしたらよいか」と話した。 外来看護師が長女に説明する内容で適切なのはどれか。
✅ 正解
1
💡 解説
✅ 食べたことを忘れる訴えや服薬の飲み忘れなど認知機能の低下が疑われる変化には、介護支援専門員に介護度の見直しを相談するよう説明する。
『ご飯を食べたのに食べていない』という訴えは、近時記憶の障害を思わせる。 服薬の飲み忘れが目立ってきたことと合わせると、認知機能の低下が進んでいる可能性がある。
生活と介護のニーズが変わってきているので、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、要介護認定の見直しやケアプランの立て直しにつなげるよう説明する。 サービスを組み直すことで、本人の安全を守り、家族の介護負担も軽くできる。
残る3つは、いずれも変化の原因を確かめないまま対処している。 食べ物を目につく場所に置くと、食べたことを忘れたまま食べ続けてしまう。 近所に出かけないよう説明すると、家に閉じこもって心身の衰えが進む。 入院した高齢者によくある症状と片づけると、必要な評価も支援も始まらない。
近時記憶とは
数分から数日前の出来事を覚えておく記憶。認知症では最初に障害されやすく、食事をしたこと自体を忘れるという形で現れる。
- 1
「介護度の見直しについて、介護支援専門員に相談しましょう」正解
生活のニーズが変わったときは介護支援専門員につなぐのが基本で、認知機能の低下が疑われるAさんでは介護度の見直しを相談するのが適切である。
- 2
「食べ物を目につく場所に置きましょう」不正解
食べ物を目につく場所に置くと過食や誤食を招くおそれがあり、食べたことを忘れる訴えへの対応にはならない。
- 3
「近所に出かけないよう説明しましょう」不正解
近所に出かけないよう説明するのは社会的孤立を招き、本人の自立や生活の質を損なうため不適切である。
- 4
「入院した高齢者によくある症状です」不正解
『入院した高齢者によくある症状』と片づけるのは、認知機能低下の評価や必要な支援調整を欠き不適切である。
📚 ここも一緒におさえておこう
認知症の症状は、脳の障害から直接生じる中核症状と、環境や関わり方の影響を受けて現れる行動・心理症状〈BPSD〉に分けられる。 在宅では、変化に気づいた家族をどこへつなぐかまでが問われる。
- 要介護認定の区分変更は状態が変われば随時申請でき、市町村が原則30日以内に認定する
- 相談窓口は地域包括支援センター。認知症初期集中支援チーム、認知症地域支援推進員、認知症サポート医などにつなげる
- 「高齢のせい」と片づけず、せん妄・うつ・薬剤の影響との鑑別も含めた専門的評価につなげる
| 区分 | 症状 |
|---|---|
| 中核症状 | 記憶障害(特に近時記憶)、見当識障害、実行機能障害、失語・失行・失認、判断力の低下 |
| 行動・心理症状〈BPSD〉 | 不安・抑うつ、幻覚・妄想(物盗られ妄想)、興奮・易怒性、徘徊、拒絶、睡眠障害 |
BPSDは環境調整や関わり方の工夫で軽減しうる。まず身体的な原因(疼痛、便秘、脱水、薬剤)を除外する。
参考: 日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン』/厚生労働省『認知症施策』
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について