第107回 看護師国家試験 午後 問108 解説
📝 問題
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。 A さん(32歳、男性)。鎮咳薬による薬物依存症で任意入院中。 さらに2週が経過し、A さんは鎮咳薬の服用をやめる意思を強く固め、今後の依存症の治療について真剣に考えるようになった。A さんの父親は A さんが幼少期のころ死亡しており、A さんは母親と2人で暮らしていた。母親は週2回面会に来て、A さんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた。担当看護師が母親と今後のことについて話すと、母親は「私が何とかします。私しかこの子の力になってあげられないのです。本当はもっと A にしっかりして欲しい。でも、そう言うと A は怒ってしまいます」と話した。 担当看護師の母親への声かけで適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 過干渉(イネイブリング)傾向の母親には、Aさんが自分のことを自分でできるよう支える方向へ関わりを促す声かけが適切である。
母親は「私しかこの子の力になれない」と話し、成人したAさんに小さな子どもへ接するように手をかけている。これは本人の自立や回復を妨げるイネイブリングにあたる。 依存症からの回復には本人の主体性が欠かせない。 看護師は母親に「Aさんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」と伝え、本人の自立を後押しする関わりへ切り替えるよう促すのが適切である。
「今までどおりの関わりで良い」は、過干渉をそのまま認めることになる。 「怒らせないように」という助言は、共依存の関係をかえって強める。 親戚を頼れるかを尋ねても、母親の関わり方そのものは変わらない。 依存症の家族支援では、家族のイネイブリングと共依存を見直し、本人の自立を支える関係へ導くことが繰り返し問われる。
- 1
「親戚で頼りになる方はいませんか」不正解
親戚の有無を尋ねる声かけは、母親の過干渉という核心の課題に応えていない。
- 2
「なるべく怒らせないようにすることが大切です」不正解
「怒らせないように」は本人の顔色をうかがう共依存的な関係を助長し、自立を妨げる。
- 3
「お母さんは今までどおりの関わりで良いですよ」不正解
「今までどおりで良い」は過干渉(イネイブリング)を肯定し、本人の回復を妨げる。
- 4
「A さんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」正解
本人が自分のことを自分でできるよう支える方向へ関わりを促す声かけで、依存症の家族支援として適切。
📚 混同しやすいので注意
依存症は家族を含めた病とされ、家族自身が支援の対象になる。 イネイブリングと共依存は言葉を入れ替えて問われるので、誰が何をしているかで見分けよう。
- イネイブリング=借金の肩代わり、飲酒・使用の後始末など、結果的に依存を続けさせてしまう行為
- 共依存=相手の世話をすることで自分の存在価値を保ち、互いに自立できなくなる関係
- 家族支援では家族自身が相談・自助グループにつながることを勧める(ナラノン、家族教室)
- 本人の行動の結果は本人が引き受けるという境界線(バウンダリー)を家族が保てるよう支える
- 家族を責めない。家族もまた疲弊し支援を必要としているという視点をもつ
参考: 厚生労働省「薬物依存症の治療・回復支援」
出典:「第107回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について