第106回 看護師国家試験 午後 問93 解説
📝 問題
次の文を読み91〜93の問いに答えよ。Aさん(82歳、男性)は、介護付の有料老人ホームに入居している。10年前まで会社を経営していた。プロ野球や世界経済に興味があり、友人とインターネットを用いて交流するのを楽しみにしている。Parkinson〈パーキンソン〉病で、現在Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージⅡ。両側の上下肢の静止振戦や動作緩慢がみられる。食事は自分の居室に運んでもらって食べている。身の回りのことは1人でできる。1人での外出も可能だが、転倒に対する恐怖が強いため1日中室内で過ごしている。 有料老人ホームの看護師はAさんに病気の進行を予防するために運動を勧めたが、Aさんは「この病気は進行性だからいつかは動けなくなる。今、転ぶと骨折して動けなくなるかもしれない。だから運動するのは嫌だ」と言う。AさんはParkinson〈パーキンソン〉病に関する情報を入手しており、病状の理解ができている。薬物は自己管理できている。かかりつけ医に自分から病状の説明を求めることもある。 Aさんの転倒の不安を軽減するために看護師とAさんが一緒に実施することで、最も適切なのはどれか。
✅ 正解
2・4
⚖️ 出題時に複数の選択肢が正解と認められた「複数正解(救済)」問題です。いずれか一つを選べば正解とされました。
💡 解説
✅ 転倒予防教室への参加を検討することと、運動の効果と転倒のリスクを比べることの、いずれも正答として扱われた。
Aさんは病気の進行と骨折を恐れて運動を避けている。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉のステージⅡは、姿勢反射障害がまだ現れていない段階で、1人で歩くことも外出することもできる。 Aさんは自分で情報を集め、病状を理解し、薬も自己管理できている。自分で考えて決められる人なので、説得ではなく、判断の材料を一緒にそろえる関わりが合う。
転倒予防教室では、バランスの訓練や住まいの工夫といった、転ばないための具体的な方法を学べる。運動の効果と転倒のリスクを並べて比べれば、漠然とした恐怖を具体的な事実として扱える。 どちらも不安の軽減につながるため、この2つはいずれも正答として扱われた。
残る2つは、Aさんの不安に応えていない。 車椅子での外出は、まだ自分で歩けるAさんから歩く機会を奪う。 廃用症候群の情報を集めるだけでは、動かない害を知って不安がかえって強まる。
姿勢反射障害とは
体が傾いたときに、とっさに姿勢を立て直せなくなる状態。Parkinson〈パーキンソン〉病では病期が進むと現れ、転倒が急に増える。
- 1
車椅子で外出する。不正解
車椅子は歩けなくなったときの移動手段。1人で歩けるAさんが使えば、歩く機会が減って動きにくさが進む。
- 2
転倒予防教室への参加を検討する。正解
転倒予防教室では、バランスの訓練や住まいの整え方を実際に体験できる。転ばずに動ける実感が、恐怖をやわらげる。
- 3
廃用症候群に関する情報を収集する。不正解
廃用症候群の情報は、動かないことで何が起こるかを知るための材料。転ぶこと自体への恐怖には答えていない。
- 4
運動の効果と転倒のリスクとを比較する。正解
運動の効果と転倒のリスクを並べると、避けたいことと得たいことを見比べられる。自分で調べて決めてきたAさんに合った進め方である。
📚 ここも一緒におさえておこう
Parkinson〈パーキンソン〉病では、動かないことで進む筋力低下や関節の硬さのほうが、生活を早く狭める。運動は続けられる形にして勧めよう。
- すくみ足には、床に引いた線をまたぐ、号令や音楽に合わせて足を出すなど、外から合図を与える工夫が効く
- 転びやすいのは方向転換・立ち上がり・狭い場所の通り抜け。ここに手すりを付け、通り道を広くとる
- 薬が効いている時間帯に運動や外出を組むと動きやすい。効き目が切れるウェアリングオフの時間帯を本人と確かめておく
参考: パーキンソン病診療ガイドライン(日本神経学会)/厚生労働省「第106回看護師国家試験の正答」
出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について