第105回 看護師国家試験 午後 問114 解説
📝 問題
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。 入院後2か月が経過し、主治医からは退院の話も出始めた。Aさんは入院をきっかけに大学を休学している。Aさんの両親が「Aは学業の遅れを心配して、退院後すぐに復学したいと言っています。Aはすぐに復学できるのでしょうか」と相談してきた。 看護師の説明として適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 退院後はまず家庭での日常生活に慣れることから始めると説明するのが適切である。
Aさんは入院して2か月。症状は落ち着いてきたが、退院した直後は疲れやすく、生活リズムを取り戻している途中である。急性期を過ぎた回復期は、現実的な関心が戻って活動できる時間が増える一方、遅れを取り戻そうとする焦りが出やすい。ここで一度に活動を広げると疲れがたまり、症状がぶり返しやすい。 まず家庭で起きる・食べる・眠るという日常生活に慣れ、そこから通学へと段階を踏むのが安全である。 復学したい気持ちは否定せず、何から始めるかを本人と一緒に決めていく。
残る3つは、Aさんの状態や気持ちを置き去りにしている。復学の時期を大学だけに委ねると、状態を把握している医療者の判断が入らない。 復学できるまで入院を延ばすのは、生活の場で回復していく機会を奪うことになる。 両親から説得してもらう対応は、Aさんの希望を頭から否定する形になり、家族との関係を損ないかねない。
消耗期とは
幻覚や妄想が強い急性期のあとに続く、心も体も疲れきって眠りがちになる時期。意欲がわかないのは回復の過程であって、なまけているのではない。Aさんはこの時期を越えて回復期に入ったところにあたる。
- 1
「復学の時期を大学に判断してもらいましょう」不正解
大学は学業の状況を判断できるが、Aさんの回復の段階までは分からない。復学の時期は、本人・家族・医療者・大学が一緒に検討する。
- 2
「復学できる状態になるまで退院を延期しましょう」不正解
入院を延ばしても復学の力が育つわけではない。生活の場に戻り、日常のリズムを取り戻すことが次の段階になる。
- 3
「ご両親からAさんに焦らないよう説得してください」不正解
説得を両親に任せると、Aさんは希望を頭から否定されたと感じる。焦る気持ちを受け止めたうえで、進め方を一緒に決めていく。
- 4
「まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう」正解
退院直後は疲れやすく、一度に活動を広げると負担が大きい。家庭の生活リズムを取り戻してから、次の段階として復学に進む。
📚 ここも一緒におさえておこう
統合失調症の看護は、回復のどの時期かで関わり方が変わる。時期と関わり方を対にして覚えよう。
| 時期 | 様子 | 関わり方 |
|---|---|---|
| ①急性期 | 幻覚・妄想が強く、不安と興奮が続く | 刺激を減らして安全を守り、休息と服薬を確実にする |
| ②消耗期(休息期) | 疲れきって眠りがちになり、意欲がわかない | 焦らせずに休ませ、回復の過程であることを本人と家族に伝える |
| ③回復期 | 現実的な関心が戻り、活動できる時間が増える | 生活リズムを整え、少しずつ活動を広げて再発予防を学ぶ |
参考: 系統看護学講座 精神看護学
出典:「第105回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について