第105回 看護師国家試験 午前 問117 解説
📝 問題
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入を行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。Aさんは要介護5に区分が変更され、自宅で療養通所介護を利用することになった。退院後1か月、Aさんは療養通所介護の看護師に「ゆっくりお風呂に入ってみたい」と文字盤を使って話した。入浴を開始するにあたり、看護師と介護職員との間でカンファレンスを行うことになった。 検討する内容として優先順位が高いのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 人工呼吸器を装着したまま入浴するため、緊急時の対応方法を検討する優先順位が最も高い。
Aさんは人工呼吸器を着けたまま入浴する。湯気と水のある場所では、回路が外れる・気管カニューレが抜ける・呼吸状態が急に変わるといったことが起こりうる。
入浴を始める前に決めておくのは、そうなったときに誰が何をするかである。看護師と介護職員が一緒に働く場では、役割を先に決めておかないと動けない。
残る4つは、命に直結しない。 座位が保てるかは入浴のしかたを選ぶ材料、関節可動域の訓練は入浴と同時に行う必要がない。回路は入浴のたびに替えるものではなく、夫の介護負担は在宅生活全体の課題で、入浴を始めるための検討ではない。
療養通所介護とは
常に看護師の観察が必要な重い要介護者や難病の人が通う、看護師の配置された通所サービス。
- 1
夫の介護負担不正解
入浴は療養通所介護の場で職員が行う。夫の介護負担は在宅生活を続けるうえで大切な課題だが、入浴を始めるための検討としては後になる。
- 2
座位の保持能力不正解
座位が保てるかどうかは、機械浴か横になったままの入浴かを選ぶ材料になる。命に関わる項目より先には来ない。
- 3
緊急時の対応方法正解
湯や湯気のなかでは回路の外れや呼吸状態の急変が起こりうる。誰が何をするかを決めてから始める。
- 4
入浴後の人工呼吸器の回路交換の方法不正解
人工呼吸器の回路は決められた間隔で交換するもので、入浴のたびに替えるものではない。
- 5
入浴時の関節可動域〈ROM〉訓練の実施不正解
関節可動域の訓練は、体が温まっているほうが動かしやすい。ただし入浴と同時に行う必要はなく、入浴を始めるにあたって先に決める内容ではない。
📚 まず何をするか
在宅で医療機器を使う人に新しいケアを始めるときは、起こりうる事故と、そのときの動きを先に決める。国試では「安全の確保が最優先」という形で繰り返し問われる。 人工呼吸器を使う人の入浴では、機器と回路を濡らさない配置、短時間で終える段取り、用手換気(手で空気を送る方法)の準備、連絡先の共有を、始める前に決めておく。
参考: 在宅看護論テキスト(在宅人工呼吸療法の安全管理)/難病情報センター 筋萎縮性側索硬化症
出典:「第105回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について