第104回 看護師国家試験 午前 問113 解説
📝 問題
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。Aさん(20歳、男性、大学生)は、皆が自分を嫌っていると言い、昨年から大学を休学し、1人暮らしのアパートで引きこもるようになった。先週、アパートで夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人から両親へ連絡があった。Aさんの両親がAさんの部屋に入ってみると、窓は新聞紙で覆われていた。Aさんは「1日中誰かに見張られている。あなたは親じゃない」と叫び続けるため、精神科病院に入院した。Aさんは、統合失調症と診断され非定型抗精神病薬による治療が開始された。入院後1か月。Aさんは体重が3kg増加した。バイタルサインに異常はない。血液検査データは空腹時血糖200mg/dL、HbA1c5.2%である。入院時の空腹時血糖は80mg/dLであった。Aさんと両親に特記すべき既往歴はない。 Aさんにみられる非定型抗精神病薬の副作用(有害事象)で最も考えられるのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 非定型抗精神病薬による耐糖能の異常が最も考えられる。
Aさんは入院時に80mg/dLだった空腹時血糖が、1か月で200mg/dLまで上がり、体重も3kg増えている。 非定型抗精神病薬には、食欲を増やして体重を増やし、血糖を上げるはたらきがある。 この2つがそろっていることから、薬による耐糖能の異常が最も考えられる。
HbA1cが5.2%と正常なのは、血糖が上がってからまだ日が浅いためである。 HbA1cは過去1〜2か月の血糖の平均を映すので、急に上がった血糖はまだ反映されない。
他の3つは、この検査結果では説明できない。 悪性症候群であれば高熱や筋のこわばりが出るが、Aさんのバイタルサインに異常はない。
耐糖能とは
食後に上がった血糖を正常な範囲まで下げる体の力。この力が落ちると空腹時の血糖も高くなる。
- 1
水中毒不正解
水中毒は水を大量に飲むことで血液が薄まり、低ナトリウム血症からけいれんや意識障害を起こす状態。1日のうちで体重が大きく変動するのが特徴で、血糖は上がらない。
- 2
拘禁反応不正解
拘禁反応は、閉ざされた環境に置かれることで生じる心理的な反応である。薬の副作用ではなく、血糖の変化とも結びつかない。
- 3
悪性症候群不正解
悪性症候群は抗精神病薬の重い副作用で、高熱・筋強剛・意識障害とクレアチンキナーゼの上昇が現れる。Aさんはバイタルサインに異常がない。
- 4
耐糖能の異常正解
体重の増加と急な血糖の上昇は、非定型抗精神病薬で起こりやすい代謝の副作用である。
📚 混同しやすいので注意
抗精神病薬の副作用は、定型と非定型のどちらで出やすいかを入れ替えて問われる。定型は運動の副作用、非定型は代謝の副作用、と対にして覚えよう。
- 定型(従来型)=手のふるえ、筋のこわばり、じっとしていられない、口や舌が勝手に動くといった錐体外路症状が出やすい
- 非定型=体重増加、脂質異常、高血糖といった代謝の異常が出やすい。定期的に体重と血糖を確かめる
- どちらの薬でも起こりうる緊急の副作用が悪性症候群。高熱と筋のこわばりが出たら、すぐに主治医へ連絡して受診する。薬を止めるかどうかは医師が決める
参考: 抗精神病薬の副作用と観察(精神看護学)
出典:「第104回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について