第115回 看護師国家試験 午後 問59 解説

一般老年看護学✔ 監修済み

📝 問題

Aさん(77歳、男性)は妻(80歳)と2人で暮らしている。5年前に認知症と診断された。最近、Aさんが妻の介助を拒否し、怒鳴ることが多くなったため、通所介護を利用するようになった。通所施設の看護師が入浴を勧めると「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」と答えた。 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

✅ 正解

4

💡 解説

✅ 入浴を拒否されたら無理強いせず、時間をおいて再度勧める。

認知症のある人がケアを拒む背景には、何をされるのか分からない不安、羞恥心、寒さや疲労、その時の気分など、本人なりの理由がある。 ここで説得を重ねたり無理に進めたりすると、不安が怒りに変わって拒否がさらに強まる(行動・心理症状〈BPSD〉の悪化)。 原則はいったん引き下がって本人の言い分を受け入れ、時間・声のかけ方・誘う人・場面を変えて再び誘うことである。

1回の拒否で入浴をあきらめてしまえば、通所を利用した意味も、清潔保持と生活リズムづくりの機会も失われる。 まずは可能性を残す対応を選ぶ。

  • 1

    今後は全身清拭を行う。不正解

    1回拒否されただけで入浴を断念して全身清拭に切り替えるのは早計である。入浴には清潔保持だけでなく、血行促進、リラクセーション、生活リズムの形成という意味がある。まずは応じられる条件を探る。

  • 2

    浴槽の使い方を説明する。不正解

    浴槽の使い方が分からないことだけが拒否の理由とは限らない。Aさんは「今は忙しくて時間がない」と自分なりの理由を述べており、説明を重ねるより、いったん受け止めて時機を改めるほうが有効である。

  • 3

    自宅で入浴することを勧める。不正解

    妻の介助を拒んで怒鳴ることが増えたために通所介護の利用を始めた経緯があり、自宅での入浴を勧めることは妻の介護負担と両者の衝突を増やす。通所介護を導入した目的にも反する。

  • 4

    時間をおいてから再度入浴を勧める。正解

    その場で説得せず、時間をおいて場面や声のかけ方を変えて再度誘うことで応じられることが多い。本人のペースを尊重する対応が、信頼関係の維持とBPSDの予防につながる。

📚 国試でよく狙われるところ

入浴の拒否は、拒む理由と、それに合った工夫を組み合わせて問われる。「なぜ嫌なのか」を先に考えてから対応を選ぶ、と覚えよう。

  • 何をされるか分からない不安 → 正面からゆっくり、短く具体的な言葉で1つずつ説明する
  • 羞恥心 → 同性介助、バスタオルで身体を覆う、他者の視線を遮る
  • 寒さ・怖さ → 脱衣室と浴室を温める、足元から湯をかける、手すりと椅子で安全を確保する
  • 疲労・体調・時間帯 → 疲れている時間帯を避け、覚醒がよく機嫌のよい時間に誘う
  • これまでの習慣 → 入浴の時間帯や入り方(朝風呂、湯船に浸かる習慣など)を家族から聴き取って再現する

参考: 認知症疾患診療ガイドライン(日本神経学会)

出典:「第115回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について

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