第111回 看護師国家試験 午後 問60 解説
📝 問題
生後11か月の男児。ある日の朝、自宅でボタン型電池を飲み込んだ疑いがあり、その日の午前中に外来を受診した。胸部エックス線撮影によって、ボタン型電池が食道下部にあることが確認された。 行われる処置で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 食道内のボタン型電池には緊急摘出術(内視鏡的摘出)を行う。
ボタン型電池が食道にとどまると、電流が流れて接触部が強アルカリ性に変化し短時間で食道粘膜の腐食・穿孔を起こす危険がある。 特に食道下部に停滞している場合は緊急に内視鏡などで摘出する必要がある。
他の選択肢は食道内の電池への対応にならない。 背部の叩打は気道異物(窒息)への対応であり、食道内の電池には適応がなく、かえって時間を浪費する。 緩下薬(下剤)で自然排出を待つのは、腐食が進行する食道内の電池では危険で不適切である(胃を通過した電池を経過観察する場面とは異なる)。 催吐薬による嘔吐誘発は、電池が食道を再び通過する際に粘膜損傷や誤嚥を招くため禁忌である。
覚え方は「ボタン型電池が食道にとどまったら、一刻を争う緊急内視鏡的摘出」。 下剤や催吐で待つのは禁物で、食道は腐食・穿孔が速い。
穿孔とは
食道や胃、腸などの壁に穴があくこと。内容物が漏れて命に関わる状態になる。
催吐薬とは
わざと吐かせるための薬。石油製品は誤嚥による化学性肺炎、腐食性のものは通り道を再び傷つけるおそれがあり、いずれも吐かせない。
- 1
背部の叩打不正解
背部叩打は気道異物(窒息)への対応で、食道内電池には適応がない。
- 2
緩下薬の使用不正解
緩下薬で自然排出を待つのは、腐食が進む食道内電池では危険で不適切。
- 3
催吐薬の使用不正解
催吐薬による嘔吐は電池の食道再通過で粘膜損傷・誤嚥を招くため禁忌。
- 4
緊急摘出術の実施正解
食道下部の電池は腐食・穿孔の危険があり、緊急に内視鏡的摘出を行う。
📚 ここも一緒におさえておこう
小児の誤飲は、何を飲んだかで対応が正反対になる。タバコなど「吐かせてはいけない」ものを中心に、誤飲物ごとの対応を覚えよう。 ボタン型電池のなかでもリチウムコイン電池は電圧が高く、短時間で組織が壊死するため危険度が高い。
- 胃まで落ちた電池は、無症状で小さいものなら経過観察されることもあるが、大きいものや症状のある場合は摘出する。
- 予防=電池ボックスがネジ止めされた玩具を選ぶ、電池や小物を子どもの手の届く所に置かない。
- 誤飲の原因としてはタバコ・医薬品・ボタン型電池・洗剤などが多い。タバコの誤飲では吐かせず、水や牛乳も飲ませない(ニコチンの吸収が早まるため)。
- 窒息の危険がある大きさの目安は直径39mm以下(トイレットペーパーの芯を通る大きさ)。
- 小児の不慮の事故では0歳は窒息が最も多く、幼児期以降は溺水・交通事故・転落が主な原因となる。
出典:「第111回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について