第110回 看護師国家試験 午前 問65 解説
📝 問題
A さん(75歳、男性)は妻(66歳)と2人暮らし。3か月前に認知症の診断を受けた。妻から訪問看護師に「夫は通所介護のときは穏やかに過ごしていると聞いているが、家では興奮することが多く、どう対応すればよいかわからない」と相談があった。このときの妻に対する訪問看護師の最初の対応で適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 興奮する状況を妻と一緒に振り返ることが最初の対応として適切である
認知症のある高齢者の行動・心理症状〈BPSD〉である興奮には、多くの場合それを引き起こす引き金(環境・体調・かかわり方など)がある。 介護者である妻が対応に困っている場面では、看護師の最初の対応として、Aさんが興奮する具体的な状況(時間帯・きっかけ・前後の様子など)を妻と一緒に振り返り、要因をアセスメントすることが適切である。
他の選択肢は要因を把握する前の対応であり、最初の対応としては優先されない。主治医への相談は要因の把握や薬物療法の必要性が見えてから検討する。散歩や通所介護の頻度を増やすことは具体的な対処法だが、興奮の背景を評価せずに提案しても効果が定まらない。
国試ではBPSDへの対応として「原因・引き金のアセスメントを最優先し、非薬物的アプローチを基本とする」という考え方が繰り返し問われる。 介護者の不安に寄り添いながら具体的な状況を共有することが支援の出発点である。
BPSD〈ビーピーエスディー〉とは
認知症そのものの症状に、不安や不快が重なって現れる二次的な症状。中核症状と違い、ケアで軽くできることが多い。
通所介護とは
日中に施設へ通い、入浴・食事・機能訓練を受けるサービス。本人の刺激になると同時に、介護者が休む時間をつくる役割もある。
- 1
主治医に相談するよう勧める。不正解
主治医への相談は要因の把握や薬物療法の必要性が見えてから検討すべきで、最初の対応ではない。
- 2
A さんと散歩に出かけることを勧める。不正解
散歩は対処法の一つだが、興奮の背景を評価せず提案しても効果が定まらない。
- 3
通所介護の頻度を増やすことを提案する。不正解
通所介護の頻度増加も背景の把握が先で、最初の対応として優先されない。
- 4
A さんが興奮する状況を妻と一緒に振り返る。正解
興奮する状況を妻と一緒に振り返り引き金を把握することが、最初の対応として適切である。
📚 ここも一緒におさえておこう
認知症は、中核症状とBPSDのどちらに当たるかを入れ替えて問われる。脳の障害そのものか、環境で変わるものかで見分けよう。 BPSDは本人の不快・不安の表現であることが多く、まず身体的要因(痛み・便秘・脱水・発熱・薬剤)を除外し、次に環境やかかわり方を見直す。
- 中核症状=記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語/失行/失認(脳の障害そのもの)
- BPSD=興奮・暴言・徘徊・幻覚・妄想・抑うつ・不安・介護抵抗(環境やかかわりで変化する)
- 対応の原則=否定・説得・叱責をしない、なじみの環境を保つ、本人のペースに合わせる、一度に複数の指示を出さない
- 介護者支援=介護負担の把握、レスパイトケア(通所介護・短期入所)、家族会や認知症カフェの紹介
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について