第110回 看護師国家試験 午前 問116 解説
📝 問題
A さん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしで、脳血管障害後遺症による右片麻痺があり要介護2である。サービス導入後1か月。今朝、妻から訪問看護師に「夫の身体が震えています。よだれを垂らして、目が合わないです」と連絡があった。訪問看護師が訪問すると、A さんの震えは止まっており、A さん自身は「何が起きていたのか覚えていない」と言う。訪問時の体温36.0℃、呼吸数18/分、脈拍82/分、血圧130/62 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %(room air)であった。妻によると、2日間排便がなく、尿量1,500 mL/日、尿の性状は黄色透明とのことだった。 妻からの連絡時にA さんに起きていたと考えられる状態はどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 震え・流涎・意識障害と発作後の記憶欠如から、けいれん発作が起きていたと考えられる。
妻の連絡内容は「身体が震え、よだれを垂らして、目が合わない」であり、けいれん(てんかん発作)が起きているときの様子を示している。 訪問時には震えが止まっており、Aさん自身が「何が起きていたのか覚えていない」と述べていることから、発作後の意識障害や健忘(発作後もうろう状態)を伴う経過とわかる。脳血管障害後遺症のあるAさんは症候性てんかんを起こしうる背景をもつ。
他の選択肢は所見と合わない。体温36.0℃で発熱はなく、尿量1,500mL/日で尿も黄色透明である。2日間排便がないことは、震え・流涎・意識障害を説明できない。 一過性の震えと意識障害に発作後健忘が伴えば、けいれん発作をまず考える。
流涎とは
よだれが口からこぼれること。飲み込みができない状態や、意識がはっきりしないときにみられる。
発作後健忘とは
けいれん発作のあいだの出来事を思い出せないこと。本人に聞いても分からないため、家族など目撃者からの情報が手がかりになる。
- 1
感染不正解
体温36.0℃で発熱なく、感染を示唆する所見に乏しい。
- 2
脱水不正解
尿量1,500mL/日・尿黄色透明で、脱水は否定的。
- 3
便秘不正解
2日間の排便なしはあるが、震え・流涎・意識障害は便秘で説明できない。
- 4
けいれん正解
震え・流涎・意識障害と発作後健忘は、けいれん発作を強く示唆する。
📚 国試でよく狙われるところ
けいれんは、その場の対応と観察の要点がまとめて問われる。「無理に押さえつけない・口の中に物を入れない」をまず思い出そう。 けいれん発作を目撃したら、安全の確保と観察が第一である。
- 対応=周囲の危険物を除け、衣類をゆるめ、可能なら側臥位にして誤嚥を防ぐ。呼吸・顔色・SpO2を観察する
- 観察と記録=発作の始まり方と持続時間、左右差、眼球・頭部の偏位、意識と反応、失禁の有無、発作後の様子
- 発作が5分以上続く、または意識が戻らないまま繰り返す場合はてんかん重積状態として緊急対応が必要
- 脳血管障害・頭部外傷・脳腫瘍などを原因とするものを症候性てんかんといい、高齢者の初発てんかんでは脳血管障害が多い
- 在宅では家族に、発作時の対応と受診・救急要請の目安、服薬の自己中断が発作を誘発することを指導する
出典:「第110回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について