第108回 看護師国家試験 午後 問110 解説

状況設定精神看護学✔ 監修済み

📝 問題

Aさん(19歳、男性、専門学校生)は、統合失調症と診断され、抗精神病薬による治療が開始された。 入院後1か月。Aさんは洗面所でボーッとしていることが多くなり、頭痛や倦怠感を訴えることが多くなった。 身体所見:身長170 cm、6時の体重60 kg、17時の体重63 kg、体温36.4 ℃、呼吸数18/分、脈拍76/分、血圧124/70 mmHg。 検査所見:クレアチンキナーゼ〈CK〉190 IU/L〈U/L〉、空腹時血糖102 mg/dL、HbA1c 5.0 %、Na 128 mEq/L、K 3.5 mEq/L、総コレステロール180 mg/dL、HDLコレステロール45 mg/dL。 Aさんの状況で最も考えられるのはどれか。

✅ 正解

1

💡 解説

✅ 多飲を疑わせる短時間での体重増加と低ナトリウム血症から、水中毒が最も考えられる。

Aさんは6時60 kg・17時63 kgと日中に3 kg増加し、頭痛・倦怠感・洗面所でボーッとする様子がみられる。 検査でNa 128 mEq/Lと低ナトリウム血症を認める。 短時間の急激な体重増加は多量飲水を示唆し、過剰な水分摂取により血中ナトリウムが希釈されて低下する「水中毒(多飲症に伴う低ナトリウム血症)」が最も考えられる。 頭痛・倦怠感・意識のぼんやりは低ナトリウム血症による中枢神経症状に合致する。

精神科では、統合失調症患者などにみられる多飲症・水中毒が国試頻出で、「日内の急な体重増加+低Na血症+神経症状」が診断の手がかりとなる。

他の選択肢は所見が合わない。 悪性症候群なら高熱と筋強剛が出るが、Aさんの体温は36.4 ℃である。 セロトニン症候群はセロトニンを増やす薬で起こる病態で、興奮やミオクローヌスが出るが、Aさんにはみられない。 メタボリック症候群は慢性の代謝異常で、半日での体重増加は説明できない。

CK〈シーケー〉とは

クレアチンキナーゼ。筋肉が壊れると血液中に増える酵素で、悪性症候群では著しく高くなる。

  • 1

    水中毒正解

    短時間での急な体重増加とNa 128 mEq/Lの低ナトリウム血症、神経症状は多飲による水中毒に合致し、最も考えられる。

  • 2

    悪性症候群不正解

    悪性症候群は高熱・著明な筋強剛・CK高値を伴うが、CK 190 IU/Lは正常で発熱もなく否定される。

  • 3

    セロトニン症候群不正解

    セロトニン症候群は自律神経症状・ミオクローヌス・興奮などが特徴で、本例の低Na血症・体重増加とは合わない。

  • 4

    メタボリック症候群不正解

    メタボリック症候群は肥満・脂質異常・高血糖などの慢性病態で、急性の低ナトリウム血症を説明できない。

📚 混同しやすいので注意

精神科で緊急対応を要する3つの病態は、発熱・CK・電解質で見分ける。

  • 多飲のある患者では定時の体重測定(起床時と夕方の差)が早期発見に有用
  • 悪性症候群では原因薬の中止と全身管理を行い、ダントロレンを用いることがある
  • 抗精神病薬の長期使用では遅発性ジスキネジアやメタボリック症候群にも注意する
精神科で見逃せない病態の鑑別
病態契機特徴的所見
水中毒多飲症短時間の体重増加、低ナトリウム血症、頭痛・倦怠感・意識障害・けいれん
悪性症候群抗精神病薬の開始・増量・中断高熱、著明な筋強剛、CK著明高値、発汗、意識障害
セロトニン症候群SSRIなどセロトニン作動薬興奮、ミオクローヌス、発汗・下痢などの自律神経症状

参考: 日本精神神経学会「統合失調症薬物治療ガイド」

出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について

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