第108回 看護師国家試験 午前 問114 解説
📝 問題
Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の処方は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが少し心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねてきた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であったこと、手足が冷えて眠れない時は熱いシャワーを浴びてから布団に入っていたことを話した。 Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 睡眠衛生の観点から、就寝前はぬるめの湯にゆっくり入って入眠を促すよう指導するのが適切である。
スムーズな入眠には、就寝前にいったん上がった深部体温が下がっていく過程が要る。 ぬるめ(38〜40℃程度)の湯にゆっくり浸かると末梢血管が拡張して手足から熱が逃げ、寝つきやすくなる。
Aさんは手足の冷えで寝つきが悪く、これまで熱いシャワーを浴びていた。 熱い湯は交感神経を刺激して目を覚まさせるので、ぬるめの入浴に変える指導が適切である。
残る3つは、いずれも寝つきをさらに悪くしうる。 休日に昼まで寝ると起床時刻がずれ、体内時計が乱れる。 眠くないのに21時へ早めても、床の中で眠れない時間が延びるだけである。 眠れないまま床でじっとしていると、床は眠れない場所だと体が覚えてしまう。
深部体温とは
脳や内臓など体の内部の温度。手足から熱が逃げてこれが下がると、眠気が訪れる。
- 1
「休日は昼まで寝るようにしましょう」不正解
休日に昼まで寝ると睡眠リズムが乱れ、平日の入眠困難を悪化させうる。
- 2
「布団に入る時間を21時に早めましょう」不正解
眠気がないのに就寝時刻を21時へ早めると、床上で眠れず過ごす時間が延びて入眠困難を助長しかねない。
- 3
「ぬるい温度のお風呂にゆっくり入るようにしましょう」正解
ぬるめの湯にゆっくり入ると末梢血管が拡張して深部体温の低下を促し、寝つきやすくなる。手足の冷えがあるAさんに適した指導である。
- 4
「眠れるまで布団の中でじっとしているようにしましょう」不正解
眠れないまま床の中でじっとしていると床=眠れない場所という条件づけが強まり、かえって不眠を悪化させうる。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
入眠時は手足の皮膚温が上がって放熱が進み、深部体温が下がる。 この落差が大きいほど寝つきやすい。 睡眠衛生の指導は、この就寝前の工夫だけでなく、嗜好品の扱いや起床時刻・日中の過ごし方まで含めて問われる。
- 就寝の1〜2時間前に、ぬるめの湯にゆっくり浸かると入眠しやすくなる。熱い湯は交感神経を刺激して逆効果
- カフェインは就寝4時間前から避け、喫煙も就寝前は控える
- アルコールは入眠を早めても中途覚醒を増やすため、寝酒は勧めない
- 起床時刻を一定にし、朝の光を浴びると概日リズムが整う。休日の朝寝坊はリズムを乱す
- 眠くなってから床に就き、眠れないまま床の中で長く過ごさない(床=眠れない場所という条件づけを避ける)
- 昼寝は午後の早い時間に30分以内にとどめ、夕方以降の睡眠は避ける
参考: 厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド』/日本睡眠学会 資料
出典:「第108回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について