第106回 看護師国家試験 午前 問109 解説

状況設定精神看護学✔ 監修済み

📝 問題

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(38歳、男性、会社員)。両親と3人暮らし。25歳のころに双極性障害と診断された。3か月前から気分が落ち込み夜も眠れず、食欲もなくなり仕事を休むことが多くなってきた。無力感を感じるようになり、休職して精神科病棟に任意入院した。入院後は1日中ベッドで横になって過ごし、他の患者との交流もみられない。看護師が話しかけても簡単な返事をするだけで無表情である。食事は病室で摂取しており、摂取量は少ない。入院後1週が経過した。Aさんはベッドに横になりじっと窓を見つめていることが多くなった。看護師が何をしているのか話しかけると、Aさんは「死にたいと思っている」と答えた。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。

✅ 正解

4

💡 解説

✅ 死にたい気持ちを打ち明けたAさんには、自殺しないことを約束してもらう。

「死にたいと思っている」と言葉にされた場面である。 この訴えは危機のサインで、話をそらさずに正面から受け止める。

自殺しないと約束してもらうことは、希死念慮を打ち明けたAさんと看護師とのつながりを言葉にして確かめる行為である。 死にたい気持ちがまた強くなったとき、まず看護師に伝えるという行動の約束にもなり、安全を守る関わりの入り口になる。

残る3つは、打ち明けられた気持ちを受け止め損なう。 話題を変えると「この話はしてはいけない」と伝わり、次から打ち明けてもらえなくなる。 うつ状態のときに気分転換を促しても、動けない自分を責める材料になる。 すぐ良くなると励ますのは、いまのつらさを否定する言葉になり、追いつめてしまう。

希死念慮とは

死にたいと願う気持ちのこと。具体的な計画がなくても、自殺の危険を示すサインとして扱う。

  • 1

    話題を変える。不正解

    話題を変えると、Aさんは死にたい気持ちを話してはいけないと受け取り、次からは打ち明けられなくなる。

  • 2

    気分転換を促す。不正解

    うつ状態では意欲そのものが落ちており、気分転換を促されても動けず、できない自分を責めることになる。

  • 3

    すぐに良くなると励ます。不正解

    励ましは「いまのままではだめだ」という圧力になる。良くなると保証するのではなく、つらさをそのまま聴く。

  • 4

    自殺しないことをAさんに約束してもらう。正解

    死にたい気持ちをはっきり取り上げ、自殺しないと約束してもらうことで、次に気持ちが強まったときの相談先が本人のなかにできる。

📚 ここも一緒におさえておこう

自殺をほのめかされたときの関わりは、TALKの原則として問われる。4つの頭文字を、声をかける順に並べて覚えよう。

  • Tell=心配していることを、自分の言葉ではっきり伝える
  • Ask=死にたい気持ちがあるかを、あいまいにせず尋ねる
  • Listen=絶望的な気持ちをそらさずに聴く。批判や助言を急がない
  • Keep safe=安全を確保する。危険なものを預かり、ひとりにしない。約束だけで安全が守られるわけではないので、つらくなったときの相談のしかたを一緒に決めておく

参考: 厚生労働省『自殺総合対策大綱』/医学書院『系統看護学講座 精神看護学』

出典:「第106回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について

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