第103回 看護師国家試験 午前 問98 解説
📝 問題
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。入院後1週間、Aさんの脱水状態は改善したが臥床していることが多い。Aさんは排泄時、手すりを使用してトイレまで歩行しているが、着脱動作が緩慢で失禁することが多い。 Aさんへの排泄援助として最も適切なのはどれか。
✅ 正解
2
💡 解説
✅ トイレまで歩ける力を保てるよう、トイレに近い病室へ変更する。
Aさんは手すりを使ってトイレまで歩けている。それでも失禁するのは、移動と着替えに時間がかかって間に合わないためで、機能性尿失禁にあたる。
対応は、間に合うように環境を整えることである。トイレに近い病室へ移せば移動の時間が短くなり、いま保たれている排泄の自立を続けられる。あわせて、ゴムのズボンなど着脱しやすい衣類に替える工夫も行う。
残る3つは、自分でトイレへ行けている力を使わなくする方向の対応である。
機能性尿失禁とは
膀胱や尿道のはたらきに問題はなく、体の動きや判断、周りの環境のために排泄が間に合わない失禁。認知症でトイレの場所が分からない場合も含む。
- 1
オムツの着用を勧める。不正解
オムツはトイレまで歩けない人に使う。歩ける段階で着けると、その力を使わなくなり、自尊心も損なわれる。
- 2
トイレに近い病室に変更する。正解
移動にかかる時間が短くなり、着脱が緩慢でも間に合うようになる。歩く機会もそのまま残せる。
- 3
膀胱留置カテーテルの挿入を検討する。不正解
膀胱留置カテーテルは尿を出せない人に入れるもので、尿路感染や活動の制限を招く。失禁を理由に入れるものではない。
- 4
ポータブルトイレをベッドの横に設置する。不正解
ポータブルトイレは、トイレまで歩けない人や夜間だけ間に合わない人に使う。日中に歩けているAさんでは、歩く機会を減らしてしまう。
📚 混同しやすいので注意
尿失禁は種類ごとに原因と対応を入れ替えて問われる。「なぜ漏れるのか」で分けると迷わない。
| 種類 | 漏れ方と原因 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 腹圧性尿失禁 | 咳・くしゃみ・重い物を持つなど腹圧がかかると漏れる。骨盤底筋の緩みが原因 | 骨盤底筋訓練 |
| 切迫性尿失禁 | 急に強い尿意が起きて我慢できずに漏れる。過活動膀胱でみられる | 膀胱訓練で排尿の間隔を延ばす |
| 溢流性尿失禁 | 尿を出せずにたまり、あふれて少しずつ漏れる。前立腺肥大症など通過障害が原因 | 原因の治療と導尿 |
| 機能性尿失禁 | 排尿のはたらきは保たれているのに、移動や着脱が間に合わない | 環境調整と衣類の工夫 |
参考: 高齢者の排泄ケアに関する標準的看護/尿失禁の分類と看護
出典:「第103回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について