第103回 看護師国家試験 午前 問75 解説
📝 問題
Aさん(45歳、女性)は、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉のため自宅で療養中である。Aさんは球麻痺症状が出現したため、経口摂取に加え、胃瘻による経管経腸栄養管理が開始された。訪問看護師が行うAさんとAさんの家族への指導で適切なのはどれか。
✅ 正解
3
💡 解説
✅ 経口摂取をするときは、頸部を前屈させた姿勢をとる。
筋萎縮性側索硬化症のAさんに球麻痺症状が出て、飲み込む力が落ちている。胃瘻を作ったあとも口から食べ続けるので、誤嚥をどう防ぐかが指導の中心になる。
あごが上がると気道がまっすぐ開き、食べ物が気管へ入りやすくなる。あごを引いて頸部前屈位をとると気道が狭まり、食べ物は食道側へ流れる。背もたれで体を支えた座位で、あごを引いて食べるのが基本である。
胃瘻は口から食べられない分を補うために使う。水分のようにむせやすいものから胃瘻に任せ、食べる楽しみは残していく。
球麻痺とは
脳の延髄(球)にある神経の中枢が障害され、飲み込む・話す・舌を動かす筋が動かなくなる状態。むせやすくなり、声もかすれる。
- 1
水分は経口による摂取を勧める。不正解
水分はさらさらしていて速く流れるため、球麻痺のある人には最もむせやすい。水分こそ胃瘻から入れ、とろみをつけたものだけ口から試す。
- 2
注入時間に生活パターンを合わせる。不正解
逆。生活のリズムのほうに注入の時間を合わせる。起床・就寝や外出の予定に合わせて注入時刻を決めると、療養を続けやすい。
- 3
経口摂取中の体位は頸部前屈位とする。正解
頸部を前屈させてあごを引くと気道が狭まり、食べ物が気管へ入りにくくなる。
- 4
胃瘻からの半固形化栄養剤の使用は禁止する。不正解
半固形化栄養剤は胃からの逆流と下痢を防ぎ、注入にかかる時間も短くできる。胃瘻ではむしろ勧められる方法である。
📚 丸暗記より仕組みで覚えよう
誤嚥を防ぐ姿勢は、「気道と食道のどちらへ流れるか」で決まる。あごを引けば気道は狭まり、あごが上がれば気道は開く——この向きが分かれば体位の問題は解ける。 <在宅の経管栄養で押さえる点>
- 注入中と注入後しばらくは上半身を30〜45度起こし、胃の内容物の逆流を防ぐ
- 注入の前後は白湯をチューブに流し、詰まりを防ぐ
- 胃瘻の周りの皮膚は毎日観察し、発赤やもれがあれば早めに相談する
参考: 在宅看護論テキスト(在宅経管栄養法)/日本神経学会 筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン
出典:「第103回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について